第19話 五人目のクルー(部員)

 三時間に及ぶカラオケ終了後……今にもカラスが鳴き出しそうな位くっきりした夕焼けと、数メートル先で賑やかな声を出している星人トリオの背中を星七と眺めながらゆっくりと足を進める。


「星人との初交流はどうだった?」


「うん、彼女達と今日一緒にいてわたし達と何も変わらないって事が分かった。それにまさか特撮バカの星人がいるなんて思わなかったよ。もっと早く言ってくれれば良かったのに」


「まぁ、特にあの金髪バカはどこまでも真っすぐで不器用な奴だからな。もっとも、ちゃんと向き合わなきゃ、皆気が付いてくれないんだけど」


「うん、そうだね」


 星七のその小さな笑みを見て、理解してくれた事を確信した。


 やっぱり、星七は俺の……東間隼大が思った通りの友達だった。


 それから優しい沈黙が続き、再び星七が口を開く。


「隼大君、なんか前みたいに笑う様になったね」


「なんだそれ。いつも、星七の店で玩具見て笑ってるだろ。怪獣見て笑う奴なんてなかなかいないと思うぞ」


 その答えに星七は小さく噴き出してから首を横に振った。


「そうじゃなくてさ、学校で前に色々あってずっと元気なかったから」


「あぁ……」


「でも、今は何だか楽しそう。学園で笑ってる隼大君見るとこっちまで嬉しくなるな」


 そう言われてると確かにここ最近、誰かと一日中話さないみたいな事は無くなくなった。


 それは正に彼女達のせい……いや、お陰な訳で。


「もしかしたら……彼女達なら隼大君にとって本当の意味で友達になれるかもね」


「…………」


 星七のその優しさを込めた期待に沈黙で返す。


 今、その答えを持っているのは彼女達で、俺は持ち合わせてはいない。


 一瞬だけ、かつて向けられた悪意が頭の中を過ぎるも、前にいる彼女達の笑い声でどこかへかき消されてしまった。


「そうだな、もしかしたらそんな日が――」


「なーに勝手に二人で盛り上がってるのよ。アタシも混ぜなさい!」


 まぁ、こんなタイミングで話を遮るのも彼女達だからこそというか。


 それを分かっている星七と小さく笑い合う。


「あっ、じゃあ星七さんが仲間になったので、是非ともやりましょうよ」


「あれ?」


 突然のアコの言葉に目を点にする俺と星七。


 すると、先に理解したランがそれをして見せる。


「防衛隊のポーズ?」


 ポーズをしてみて、直ぐに星七は理解するあたり流石特撮オタクだ。


 なので、アコと更にランと釣られた桜に加え、そのポーズをして見せた。


「これは俺たちなりの歓迎の意味だ。星七は俺の監視を理由に入部するって言ったけど、星七自身がどうしたいか意志を示してくれたら嬉しい」


「うん、じゃあ」


 星七も同じように親指と人差し指を立てて胸に当てる。


「細田星七、地球防衛部に入部します! よろしくお願いします!」


「えぇ、歓迎するわ。セナ隊員!」


 一時間前の彼女はどこに行ったのやら、ランは笑顔で星七を歓迎する。同時にアコは星七に抱き着き、桜は小さく拍手をした。


 こうしてまた新しい隊員を迎えた地球防衛部。


 きっと俺も星七も、そして彼女達にとってもまた新しい友達が増える特別な日になったのは違いなかった。


 すると、調子に乗ったランが。


「ほら、早く玩具天国へ戻るわよ。まだ語り足りないんだから」


「えぇ……もう帰りましょうよ。流石に日も暮れますし迷惑ですよ」


「何言ってるのよアコ。アンタの特撮教育を兼ねて行くのよ。いいでしょ、星七?」


「うん、じゃあ皆で戻ろうか」


 やった! と、尻尾とツインテールを振り回し、子供の様にはしゃぐラン。


 もうこうなってしまえばどうしようもないと後に続く桜。


 その後に仕方ないですねと渋々連行するも、小さく足が跳ねているアコ。


 そして、そんな彼女達を見て優しく目を細める星七。


 そんなどうしようもない位普通の光景がずっと続けばいい、そんな風に思ってしまった。

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