第17話 故郷は違えど好きは地球にあり
「本日入部する事になりました。二年六組の細田星七です。よろしくお願いします」
ホワイトボードの前で星七が頭を下げる。その挨拶に、俺とアコだけが小さく拍手した。
「よろしくお願いしますね。細田さん」
「星七で大丈夫です。わたしもアコさんでいいですか?」
「はい、そう呼んでいただけると嬉しいです」
先ほど懇切丁寧に誤解を解いたお陰もあり、どうやらこの二人は既に打ち解けあっていいつつあるようだ。
だが、後の二人はというと……。
「アタシは絶対に認めないだから。百万光年あっても絶対にね」
「…………」
ランはさっきから不満垂れ流し、桜はずっと黙りこくっている。
先ほど星七が入部すると言った直後も――。
「なんでこんな頭のおかしい女を部活に入れなきゃいけないのよ! アタシは絶対反対だわ!」
との一点張り。なんとかアコとなだめたのだが、それでもまだ気に入らないらしい。
俺からしたらお前の方が十分頭のおかしい奴だとは思うが、トラブルの種になりかねないので黙っておこう。
「隼大」
ようやくここで口を堅く結んでいた桜が、話しかけてくる。
「ウチは別に細田星七を入れる事は反対じゃない。隼大が前に言っていたようにお互い近い距離間で触れ合えば、理解できるかもしれないと思う。多分それはランも同じ」
「だったらあいつは何で入部を認めないんだよ」
「それはまた別の理由だと推測する。ただそれに気がつかない隼大は、かなりの鈍感」
「ど、鈍感? ただ意地を張ってるだけじゃないのか」
「それも少なからずはある。でも、本当の理由は――」
「わー! わー! 桜アンタ何勝手な事言ってるのよ!」
「ウチは別に本当の事を言おうと――」
「う、うるさい!」
バチバチバチ!
何故か尻尾で殴られる桜。やられた直後でも、無表情なのは素直に尊敬する。
「ラン、痛い」
うん、だろうな。どうやらロボットでも痛覚はあるらしい。
「アンタが余計な事言おうとするからでしょ! バカ桜!」
そんな二人を横目に、談笑していたアコと星七に声を掛ける。
「お前らは大丈夫そうだな」
「はい、星七さんは隼大さんが言っていたようにワタシ達に対しても理解のある方で嬉しいです」
「わたしもアコさんと話せて嬉しいな。やっぱり星人ってどこか違う生き物なのかと少し思ってみたけど、話してみるとわたし達と何も変わらないんだね」
どうやら星七も最も理解してほしい事に気がついているらしく、アコの触角は気になっているようだが正面から向き合ってくれている。
星七がこの部入ってくれたのは正解かもしれない。
「――でも、あの人は無理かな」
ランに冷たい目を向ける星七。どうやら正解じゃないかもしれない。
「ふふっ」
その星七の拒否反応を聞いてアコは小さく噴き出す。
「何か、星七さん。保健室で倒れた時の隼大さんと同じ事言ってますね」
「あぁ、確かにそうだな」
最初は確かに俺もランをかなり誤解していた。単純に人を困らせようとする頭のおかしい宇宙人だと思っていた。
しかしそれは誤りで、彼女はどこまでも純粋で真っすぐすぎるただ友達が欲しいだけの女の子だった。
「そうか……そうだよ。簡単な事じゃないか」
その誤解はどうやって解いた?
そう、彼女の本心を知って、ようやく初めて向き合ったのではないだろうか。
「っぷははっは……!」
それに今更気が付き、おかしくて腹の底から笑ってしまう。
まさか、一度自分が経験した事をこんな形で思い出すなんて。
「ど、どうしたの隼大君、いきなり笑い出して。やっぱり洗脳を受けてるんじゃ?」
「ち、違う。また何かきっかけが必要みたいだな」
首を傾げる星七。アコはもう既に理解していたのか、手を合わせ優しく微笑んでいた。
「今日、星七の家に行こう。そうすればお前らは友達になれる」
星人の友達と地球人の友達のきっかけ作り。
星を越えた仲人をするなんてどうやら俺は宇宙レベルのおせっかいらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます