第9話 消されたSHR

 朝のHRがとっくに終わった休み時間の教室に戻ってくる。


 何人かの視線には気がついたが、気にせず自分の席に座った。


「アンタ何やらかしたのよー、呼び出されるなんて恥ずかしー」


 こいつ……誰のせいで呼び出されたんだと思ってるんだか。


「どうせ麗に怒られてたんでしょ。目に浮かぶわー」


 そうケラケラと笑うバカに対し、右隣のアコが心配そうに小声で話しかけてきた。


「あの……ワタシ達のせいで呼び出されたんですよね。ご迷惑かけてすみません……」


「違う、とは言えないけど、別に迷惑なんて掛かってないぞ。寧ろ四天王寺さんと話が出来て良かった」


「そうですか、隼大さんも生徒会長さんと仲良くなってくれて嬉しいです」


 ああいう理解のある人もこの学園にいると知れただけで十分な収穫だ。


 それに、友達にもなれたのだから。


「ま、麗はアタシ達の事が大好きだからねー。特にアタシにはメロメロよ」


「そうですね。生徒会長さんにはワタシ達星人は本当によく面倒を見ていただいています」


 二人の口ぶりを見る限り本当に四天王寺先輩は可愛がっているらしい。だからこそ、そんな彼女達を守るために俺を試したのだろう。


「そう言えば、部活動って今日は何をやるんだ?」


「あんたが考えてくれるんじゃなかったの?」


「それは今後の方針についてだろ。普段は何してるんだ?」


「…………」


 相変わらず都合が悪い事をいう時はそっぽを向いて、黙ってしまう。それに見かねたアコが答える。


「その……普段は特に何もしてません。学園を回ったりだとか……、最近してた事で言えば拉致ですかね」


 最近やってたことが拉致って……普通に犯罪集団じゃないか……。それに今まで何もしてこなかったって、それは果たして部活と呼べるのだろうか。


「友達を作る――というか星人についての理解を深めてもらう事がお前らの目的だろ。それに準ずる事をすればいいんじゃないか?」


「例えば?」


 こちらを見ずにランが尋ねてくる。


「例えばそう、校内の清掃活動とか、ボランティアとか色々あるだろう」


「なんでアタシ達が地球人の為にそんな事しないといけないのよ」


「信頼を得るのはそれなりの誠意とアクションが必要だ。こういうことの積み重ねが理解に繋がるんだぞ」


「ワタシも賛成です。少しでも学園に対して慈善活動が出来れば、意識を向けてもらえますから」


 アコが同意してくれる。後は隊長の返答を待つのみだ。


 そして、数秒後――。


「……分かったわよ。やってみる」


 そっぽを向いたままだが同意はしてくれた。


 なら、早速放課後から清掃活動に取り組むとしよう。


「そう言えば俺の出席は?」


「――それなら、早退したってちゃんと言っといたわよ」


 ようやくこちらを向いたと思ったら、ランは半笑いで小さな舌を出す。


「お、お前なぁ……」


 こいつ……毎度毎度人の気も知らないで……。


「だ、大丈夫ですよ隼大さん。放送が入った時点で先生も気がついていましたし、生徒会長さんもその点は根回しているとは思いますよ」


 ランが早退したと言ったのは本当ですが、と申し訳なさそうに付け加えて。


 そういう所が星人に対しての理解を誤解させていると、この金髪バカはもっと気がつくべきだ。


 それを彼女が理解する日が来るのは、恐らくまだ遠い先の様な気がした。


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