第7話 星人部室地帯

 どっかの男子学生と、どっかの星人達が友達になった十分後。


 その団体一行はある場所に向かっていた。


 その間、先行して歩くランとアコに対し、いつの間にか隣を歩いていた紫ゼンマイポニテが話しかけてきた。


「自己紹介が遅れた。ウチの名前は、おうロイド。F57星雲にあるエキスマキナ星から来た高機能天才AI。ウチの事はさくらって呼んで、隼大」


「あ、あぁよろしく……」


 と、桜と名乗る天才ロボットが無表情でピース。


 ゼンマイがついて高機能天才AIなのかはかなり疑問だが、テストの時のサーチ能力を見るに、多分そうなんだろう。それと、感情の起伏が見えないこいつがまだ一番個人的に掴みにくい。


「着きましたよ」


 部活棟の三階、右端奥にある地球防衛部の部室の前に立つ。


「紹介するわ隼大、ここがアタシたちの基地よ!」


 手を広げ勢い良く部室を開けるランだが、そこには机と椅子、それとホワイトボードだけが殺風景に置かれていた。


「いや……地球防衛部の部室ってくらいだから特殊な機械とか武器とか置いてあるのかと思ったよ。後特撮グッズとか」


「特殊な機械とか武器とかは、ワタシ達の故郷から持って来れば簡単に揃いますが、現在条約で科学発展の格差が激しい惑星に持ち込むのは禁止になっていますからね」


「特撮グッズは一応地球に持って来る時に検問で没収されてね……。アンタらの星で作ったものなのにー! って腹が立ったわ」


 だからこんな事になっているのか……少なくとも何をする部活なのか分かるものを一つくらい置いた方がいい。


「というか、そもそもこの部活は何を目的に活動しているんだよ」


 その質問にアコは苦笑い、桜は目線を逸らし、ランだけが笑いながら目を瞑っている。


「……それはアレよ。地球を侵略者から救うのよ」


「うん……」


 こいつに答を期待するのはよそう。アコの方に向く。


「で、どうなんだ?」


「えっと、この部活はワタシ達星人がこの学園で友達を作るという名目で創られた部活です。生徒会長さんにも協力していただき、部室も貸してくれました」


「イエス。しかし、創部三カ月以内に一般学生一人を入れなければ廃部という約束になっていた。だから、ウチらは部員を探していた」


 だからあんな凶行に及んでいたのか……。あれじゃ、絶対に入ってくれないだろうに。


「べ、別にアタシは廃部になっても良かったけど。まぁ今はハヤタがいる事だし、他はもういらないわ」


 お前はツンデレか。というか、宇宙にもツンデレって存在するのだろうか?


「そう言えば、ここの部長って――」


「アタシよ、因みにここでは隊長ね」


 小学生並みの勢いで手を挙げるラン。うん、予想通り過ぎて何も言えない。


「後、顧問っていないのか? 普通どんな部活でもいるもんだけど……」


「その点は心配ないわ。うららが顧問として名前を貸してくれてるから!」


「麗って……」


 どこかで聞いた事がある様な……確か――。


「はい、先ほども話に出た通り生徒会長さんです」


「あぁそうだ――って、どういう事なんだよ……」


 学生で部活の顧問になるなんて滅茶苦茶過ぎる。ていうか、そもそもこいつらと接点があるのが謎だ。


「麗はアタシ達にゾッコンなのよ。だから、この部活を作るときも手伝ってくれたの!」


「は、はぁ……」


 この学園で部活を承認させるのって結構大変だったような気がするんだけど……。


 一体、生徒会長とはどれほどの権力者なのか……。


「まぁ、大体は部の事を把握出来たが、やっぱり本当の目的はこの学園で友達を作る事なんだろ? だったらそれをすればいいんじゃないか?」


「「「…………」」」


 見事、三人とも黙ってしまう。


 まぁ、それが出来たら簡単じゃないよな。


「まぁ、俺なりに何か方法を考えてみる。友達が誤解されたままじゃ嫌だからな」


「ハヤタ……」


「隼大さん……」


「隼大……」


 ランとアコは目を潤ませているが、桜は無表情なのでよく分からない。


 まぁともかく――。


「この度、地球防衛部に入隊する東間隼大です。よろしくお願いします!」


 右手親指と人差し指を立てて、わざとらしくして見せたのはギャラクシーマンの防衛隊が行う決起のポーズ。


「な、なんですかそれ?」


「知らないのアコ? これは防衛隊のお約束ポーズよ」


「桜、サーチ開始」


 理解しているランは得意げに、分かっていないアコは見様見真似で、桜はその場で検索したのか寸分違わず指を立てた。


 そして合わせるように向かい合った四人で、左胸を打つ。


「ようこそ地球防衛部へ! ハヤタ新人隊員!」


 こうして隊員に地球人をようやく迎えた地球防衛部は、見えない何かと戦うために前に進み始めるのだった。




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