実験施設?
洞穴の中を進んでいくと、何かの地下施設の廊下に繋がっていた。
こんな都市の直下型にある地下施設だ、先程の出来事を払拭できるほどの、 高揚感が体を駆け回る。
壁伝いに廊下を渡っていると、所々実験施設ではなさそうな場所が、
ちらほら見受けられる。
さらに奥に突き進み、他の場所に比べ小さめのとある部屋に入った所で、手持のソーラーランプで手元を照らしてみる、
するとそこは、他の場所が電子機器類で埋め尽くされていたのに対し、木製の設計台とその研究過程で作られたであろう、大量の紙類が散乱しており、
一人の人間が居住していたのか、小さく寝起きしていたであろう場所が設置されている。
他にも、書籍室や、洗面所等々、明らかここだけで生活のインフラが整いつつある場所だった。そして所々に星を模った物が沢山あった。
そして、よく周りを探索せずともこの場所が、他の空間に比べ浸食があまり進んでおらず、比較的新しい設備だったことも確認できた。
「誰かここに居た?……。」
そんな思考が通り過ぎる。
明らかこの場所が他の場所に比べ異変が多いため、隈無く捜索してみると、
寝室部にあった、ベットの下側によく見なければ気づかなかったほどの小さな
暗号のタッチパネルがあった。
3×3でされており、数字は1〜9の9通り。
表示されているのは四桁、このタッチパネルに回数制限がないのだとしたら
9999通り。最悪全部ベタに入れてみるというのも手だが、本人以外にもわかる様ヒントくらいはあるだろう。
そういえば書棚の本の配列が、一段目から順に、
「3」 「7」 「4」 「4」
冊と並んでいるのに対し。
先程の研究場所と思われる場所にある研究棚も、
「1」 「8」 「7」 「2」
と並んでいたのを思い出した。本自体が失くなっている、もしくは無いなら、
一々これほどに大きい本棚を用意する必要がない。
それに地面に散乱していたのはあくまで紙類であり、本ではないのだ。
そして丁度上の数が下の数の二倍になっていることにすぐ気がつく。
しかしこれだけではよくわからない。
「関係あるとすればこの施設か?」
そこでこの研究施設の配置をもう一度思い出してみる。
部屋数は 「7」
そして所々にある、星を模った模型や家具等々、其処から考えると、
此の二つの数列にも意味が?
「だとすると……、答えは…。」
カッと頭が閃き答えが思い浮かぶ。
予想通りこの数列が答えであり、それを入力した途端、タッチパネルが
「ピピ。」という音を立て、壁の中に入っていった。
何も変化が起こらない訳がないので、一旦ベットの下から這い出て、寝室のドアの横で変化を待っていると、
いきなり部屋の壁がサイコロ型に線が入り、一部はその四角が幾つもの小さな形となり最終的には、コンクリートで包まれた部屋だったが、
何故か、壁のみならず木製の部屋となり、これが本来の大きさなのか、見たところ先程の四倍の広さとなっていた。
「……。」
先程から変化が起きるばかりで遂には声も出なくなってしまった。
それでも、探究心だけは留まることを知らず、「次はどんな仕掛けが!」と心をくすぐってくる。
一眼見ただけでこの部屋の全貌が確認できる。
中央にレトロな木製デスクがあり、そこには一冊の本が立て掛けられており、その背後にはいつの時代に作られたものなのだろう、薇式の古時計が立ってあった。先ずはデスクの方だ。
先程の立っていた場所から反対側に回り込み、引き出し部分が顔を出す。
机の上には本以外何も乗っておらず、その本自体だが、革製のベルトで綴じられており、金の刺繍で右下にこの本の筆者だろうか、名前が入ってある。
『ミクロス・フラネリカ」
おそらく名前からして女性だろう。
というより、なぜこの様な場所でこんな本を書いていたのだろうか、
兎に角、その事は後回しだ、先にこの机の中身を確認しよう。
椅子が入る部分以外の引き出しは、右側に四段ある以外には収納場所は見当たらない。
確認してみたが、中にはあまり入っておらず、
入っていた…と云えば入っていたのではあろうが、何と書いているかわからない様な字で、乱雑に書かれた資料が束で入っていただけだ。
「後はこの本だけか…。」
その後隈無く探してみたが、先程の様なタッチパネルが隠れているわけでもなく。ただ無駄な時間を過ごしただけだった。
最後の望みである、フラネリカ著の本を開く。
厚い表紙を開き中身を書いてみるとそれは日記の様な研究結果の様な様々な事柄が書いてあった。
「この日記兼、成果書を書き留めて約4年が経った。
最近、突如として起こった謎の気候変動や、それに伴う民族としての大移動が重なり、この世界は混乱に陥っている。しかも宇宙空間のダークエネルギー波の乱れで、星々の崩壊が所々で観測され、其れによる重力場の乱れで、この星の衛星が同様に崩れ始めている。」
「僕達が受けた、あの直下型の地震はこれの様に崩壊がこの星でも起こってしまい、それに僕たちが巻き込まれた……。と、そして最近隕石が多かったのは、宇宙空間の乱れで起きる、星々の崩壊か…。」
だとすると、この時計が言っていた事は本当ということになる。
心の底では、「なんとか出来るかもしれない」という考えがあったかもしれないけれど。このことで全ての希望を折られた。
『残 21:09:59』
残りも1日を切り、終焉が近づいてくる。
やはり人っていうのは、やはりここぞと言う時に無力だからな………。諦めるしかないのだろうか。
「しかし、だからと言って、私や同志たちがあきらめるわけがない。
乱れを観測したあの日から、何とかこの星を脱出するため、人類たちの箱舟を造設してきた。そして、他の支部の方達にも協力を仰ぎ、何とか大多数の人達を、箱舟の建造場所付近に移動させることが出来た。
後は『BETH』の人達と、私が派遣した
前者の方は、連絡手段と言うのは後伝されておらず分からずじまい、
後者の方はネクロシス《死神》という、空前絶後のハリケーンが直撃、連絡が取れなくなってしまった。恐らく全滅だろう。
この状況を打破する為の情報収集隊が消えてしまっては如何しようも無い。これ以上無駄死にさせない様にするためには、この様な大隊は組むことが出来ない。生存を確認しに行こうにも場合が場合だ。行く事は出来ない。万策尽きて出来ることといえば、今生存している市民達を如何にか未来に残すことだ。
もうフェーズⅢに移行するしかないだろう。私的には一人でも多く助けたいというのだが、この様な私が残りの270万人の命を背負っているのだ。職務放棄は許されない。
すまない同志たち。もし生き残っているとするならば、安らかな余生を………。」
冊子の半分程を使い、これを書いたときの現状を書いていた。
人が完全に残っている訳では無かったのは『BETH』や『レタゲイシュ』の人達がいたからだ、これだけで分かる、僕は後者の子孫だ。子供の時の記憶が朦朧としているが、周りの大人達含め、成年の人達は全体的に、性別問わず屈強そうな健康体の人たちが多かった。僕たち子供が生き残って彼達がいなかったのは、恐らくレタゲイシュとして天変地異を観測し、その道中で身を張って生き延ばしてくれたのだろう。
そして最後には震えた字でこう書かれていた。
「もし、これを見てくれているならば、君は前記に載っているうちの何方かの人だろう。
もしかしたら、その子孫かもしれない、
ここで言うのもおかしな話だ、ちゃんと顔を見合わせて正面で言いたい。だが状況が状況なんだ本当にすまない。
もう一度、本当にすまない、君達を置いていってしまって。
いつか会えるとするならば、その時に、いくら罵倒しようとも、暴力を振るおうとも許そう。私はそれだけの大罪を犯した。
だけれども、そんな私を許してくれるのならば、その時は………。」
其処からは涙だろうか、所々が字が滲み読めなくなっている。
「また一緒に歩こう。
「最後だ、この本の最終ページにチップとそれに対応する再生機達が眠っている部屋へのアクセスキーが入っている。其処にはそれ以外にも役に立ちそうなものを入れている。
ここまでたどり着いた君になら使い方は分かる筈だ。
キーだが背後の時計に仕掛けで入っている。最後のクイズだ解けるだろう?」
そしてページをめくると左手にチップ、右側にカードが挟まっている。
それらを取り出し、時計に向かう。
「分かってるよ、答えは………。」
『 04101また会おう。』
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