第3話 今日は同室者が決まりました!

「一応由美子さんと花林ちゃん以外でいい?」


そう言う美咲さん。どうやら本気で警戒されているのかもしれない。


「私は全然いいよー!」


元気に返事をする宮村。お前さえ勝ってくれればあとは誰でもいいとも思っている。


「え、私もするの?」


そう言ったのは桐山さん。俺の見た感じでは、単にトランプをするのがめんどくさいって感じの顔。


「もちろんだよー」


「それなら、私が負けってことでいい」


桐山さんはどうやら本気でトランプをしたくないらしい。でも、その敗北者って……。


も、もしかして、桐山さん実は俺のことが……ってない!余計なことは考えるな。


「えー、やろうよー。やるならみんなでやろうよ」


「一回だけだよ?」


「うん!」


どうやら、桐山さんもやることに決まったらしい。


「それじゃあ4人で始まるよ?」


「私もやりたーい!」


そう言ったのはこの中で最も小さな少女。そう花林ちゃんだ。


「いや、もし花林ちゃんが負けたらそらくんと一緒に寝るんだよ?それでもいいの?


「うん!私は全然いいぜ!後輩とは結構仲良くできそうだし、負けたら全然喜んで一緒に寝てやるぜ」


多分この子は下ネタとか全然分からないんだろうな。チューしたら子どもが生まれるって思っている年頃なのかな。


「そう?じゃぁ5人で」



こうして始まったトランプ大会。


種目はババ抜きに決まったらしく、最後までジョーカーを持っていた人の負けということだ。


結果だけを言ってしまうと、1人だけが完璧に弱すぎてずっとその人がジョーカーを持ったままババ抜きは終わった。


彼女は初めからジョーカーを所持しており、その手札を引くのが美咲さんだったのだが、美咲さんがジョーカーに触れるたびに肩がビクッとする。勝負に関係ない俺が見ていてもそれがジョーカーだと言うことが一目瞭然だった。


そんな最弱且つこれからの俺の同室者は……、桐山さんに決まった。


一番ポーカーフェイスについては得意そうに見えていたため驚きの結末となった。



トランプ大会が終わったあと、すぐさま荷物整理が始まった。


前までは美咲さんと桐山さんが同じ部屋だったらしく、美咲さんがその部屋を開けてくれた。そして、美咲さんはこれから愛海と同じ部屋で暮らすらしい。


ちょうどいい機会なのでこの家の大体の説明をしておくか。


一回にはリビングやらなにやらがあり、一つの部屋が助下さんと花林ちゃんが暮らしている。


そして、二階に上がると、3つ部屋がある。


左の部屋に入るとそこは宮村とまだ謎の小春さんと言う人が住んでいるらしい。まあ、かなり恐ろしそうな部屋だ。


そして真っ直ぐの部屋に入るとそこは美咲さんと愛海が住む部屋だ。ここは女子高生って感じの部屋だな。


そして、これから俺と桐山さんが住むことになる右の部屋。


なぜか、美咲さんには「頑張ってね」と言われた。全く意味がわからないが。俺は持っていた荷物をもう一度しっかりと握ってドアを開けた。


「え……」


俺は言葉が出なかった。


そこにあったのは山積みになった本だった。


大きな本棚があり、その本棚の中は完全に埋められており、それでも足りない本たちが山積みになって置かれていた。


この部屋を半分に割ったとしよう。その半分は本だと言っていいだろう。


生活できるのはこの部屋の半分、布団が敷かれている部分を除けば三割程度だ。


っ!俺はあることに気づいてしまった。


布団が一つしかない……。


なるほど。俺の頭の中で全てが繋がった。


それだからか。「一緒に寝る」って言ってたのは、本当に同じ布団で寝るってことだったのか。


ずっと疑問に思っていたことがようやく理解ができた。


俺はひとまず荷物を置き、再びリビングへと向かった。


なんだか階段を下りるたびにいい匂いがする。


リビングに入るとそこには美味しそうな料理が並んでいた。そういえば、俺が来たせいで昼飯もまだ食べてなかったな。もう2時すぎてるし。


みんなでいただきますをしてから食べる。


小学生かよとツッコミたくなったがなんとか止まった。ここではこれがルールなのだろう。


飯も食べて、俺は特にすることもなかったので、花林ちゃんの遊びに付き合ってあげた。


なんか、花林ちゃんみたいな妹がいればいいのにと思ってしまう。


そして、夜になり、晩ご飯も食べ終えた。


なぜか1日目だからという理由で一番に風呂に入らせてもらった。


そして、風呂から出た俺は自分の部屋に入った。


そして、まあカバンからタブレットを取り出し、電子書籍を読む。


元々を言えば紙派の人間だったのだが、ここに暮らすことになったのでなるべく量を減らすために電子書籍にした。


俺は視線を上げる。そこには山積みになった本。


本当に電子書籍にしておいてよかった。


俺が家にあった本を全部ここに持って来ていたらこの部屋が完全に物置になっていたところだ。


俺は視線を落として読書に集中する。


数分後、視線を上げる。


俺は立ち上がり、山積みの本に近づく。


っ!嘘だろ……。そこに置かれていた本を見る限り、ほとんどがラノベだった。


改めて思った。桐山さんとはやっぱり気が合うかもしれない。言ってしまえば、この部屋は一番の大当たりだったかもしれない。


俺は山積みの本に手を出す。


おお!なんだここは?!まさに天国じゃねーか!


その本を詳しく見ていくと、異世界からラブコメ、SF、頭脳戦系まで幅広く持っていた。


普通にテンションがめちゃくちゃ上がる!


その後も本を漁りまくった。その中には王道なものから俺の知らないものまで本当に天国に来てしまった。


「な、なにしてるの……?」


「っ!」


振り返ると、そこには全裸の桐山さんが……って!なんで全裸?!


俺は慌てて後ろを向いた。


「ねえ?!なにしてるの?!」


先ほどとは違って少し声が大きくなった。でも、これが俺たちの普通の会話ぐらいの声量。


「って!まず早く服着てくださいよ!」


「なんでよ?!それより」


「それよりじゃなくて!俺、男ですよ!今あなたの前には男がいるんですよ!」


「あ、そっか、そうだった。いつもここはみんな女の子だったから気付かなかった」


そんなわけあるか!お前は裸族か!


思いっきり頭の中で突っ込んだ。


俺は目を閉じて先ほどの眺めをもう一度想像す……しねえ!


で、でも、自然とさっきの全裸の姿が頭から離れない。


胸は大きいとまでは言えないが十分膨らんで……って、静まれ、静まれ!


「もう大丈夫だよ」


そう言われて振り向くと、しっかりとパジャマを着た桐山さんがいた。風呂を出たばかりなのか髪の毛は若干濡れていた。


てか、灰色のパジャマを着ており、それがほとんど俺と同じなんだが?!なんかペアルックみたいになっているんだが?!


それより、俺の想像していた女子高生と完全に離れていた。俺の想像では可愛い動物のパジャマを着ているのかと思っていた。くそっ!


「で、なにしてたの?もしかして、初日から下着泥棒?」


え、俺初日から下着泥棒に勘違いされてるの?第一印象悪すぎでしょ。


「いや、違っくて、ちょっと本が気になって。桐山さんってラノベ好きなんだね」


「え、君ラノベ知ってるの?」


この時の桐山さんはどこか目が輝いているように見えた。


「え、あ、あ、うん。俺もラノベ好きでさ。まあ、ここに来るって分かってからは電子書籍にしたんだけどね」


俺が言うと、桐山さんが近づいてきて俺の手を握ってきた。って、ええええ??!!


「ここにきてから初めてラノベ好きな子に会えたよ。ほんと嬉しい♪」


桐山さんの笑顔を俺は初めて見た。


純粋に可愛いと思ってしまった。


「ほんとですか。僕もラノベ好きな人とここで会えるとは、幸せですよ」


もっとも欲しいと思っていた友達ができた。


「あ、読みたい本とかあったら勝手に読んでもいいからね」


「まじですか!ほんとに嬉しいです!」


この後、ラノベやらアニメやらについて、夜まで語り続けた。


その中で決まったことなのだが、時々一緒に本屋に行き、どちらか1人でも読みたいと思った本を買い、その本を共有するということになった。支払いは割り勘で。


これぞまさにwinーwinというものだ。

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