銀雪。


 真っ白い布地が芝生の上に広がっていました。贅を凝らした裳裾は繊細で触れば雪のように融けそうでした。


 小さな少年が俯きがちに座り込んでいます。日の光に宝飾具が目の眩むような銀の光を放ちます。

 ふと、彼はこちらを見上げました。相変わらず、綺麗な顔でした。精緻な美術工芸品でも見ているかのような気持ちにさせられます。

 青い虹彩が不安げに揺れました。頼りない風情。吸いこまれそうな神秘的な色合いでした。湖上に建つヴェルセニアの青く輝く水平を見つめているかのようでした。


 どうして大人しくしていないのでしょうか。


 わたしは、迷子になったアルエリヤを見おろしました。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る