ダンジョン

 不気味などこかを探索したかったのかもしれない。

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 ダンジョン、というよりSCP財団の現場ような雰囲気。調査班の後にきた、事態を収拾させるための実働部隊、自分はその一員。派遣した部隊のほとんどが帰ってこなくなり、何度目かの編成といったところ。


 空間は地下にあり、一見古代の遺跡を思わせる。天井は正方形、ピラミッドを逆さにしてくりぬいたような造りだ。壁沿いにぐるりと通路があり、中央が吹き抜け、下階にいくほど一周が狭くなっている。壁沿いの通路は、途中で下や上に階を移動できる階段がある。ダリの騙し絵にも似ている。

 入り口はひとつ。真ん中より上くらいの階層にあり、手摺のない通路から下を覗くと、最下層の中央に奇妙な建造物が建っているのがみえる。

 原始的な石造りの壁は上層にいくにつれてヒビや苔が目立つ。しかし通路の造りや研磨方法は、現代人では理解できない未知の技術で作られている。宇宙人の住居。人外の文明の跡。人智を越えた何者かの遺跡。そういった場所にきたエージェントが我々だった。


 空間には同じようなエージェント班があちこちの階を分担して探索しており、足を踏み入れた時は部屋ごと自分達を飲み込んでしまいそうな気配があった古代遺跡は、数時間とたたない間に同じ服装の者達に占領されてしまった。ここまで踏み荒らしておきながら、何も起こらないのは逆に不気味だとさえ思った。


 自分がきた階の壁には、扉が均等に並んでいた。前を歩いていた隊長の男が足を止める。

 ここ◯◯前から、我々の探索部隊の人間が消息を絶っている。ここだ。といって、通路の影を指差した。あちこちにこんなモノが落ちていた、と。


 足元には人間の手足のようなものが散らばっていた。出血はない。腐敗もせず、石膏のように硬くなったまま、砕けた彫刻のように欠片が転がっている。

 扉には入るなよ。

 そう注意する隊長に続いて、探索を続けた。

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