魔女の森②

 駐車場に戻り、埃の被った車を一瞥するとまたすぐ道を引き返す。

 日記の文章と実際の植物の配置を検証している内、段々と話がみえてきた。


・聞こえる日記は

「3/x 春、ーーーー」「8/xx 夏、ーーーー」

というように、全て日付と季節から始まる。


・日付の順番からして、山の上から駐車場までを下るように綴られており、駐車場に着いた記述がないのでその直前で止まっている。


・山の上から夏、春、冬、と続き、ひとつ読まれるごとに季節が変わっている。


・紹介される植物は、すべてその植物の花や実が一番綺麗に咲く季節で記されている。(日記にそうある)



 家に戻ってくると、女性が私と男を中へ招き入れた。

玄関すぐの廊下は左右に部屋があるようで、招かれた左側の部屋にはシンプルな机と椅子があった。

 椅子に座ると、女性が厚いファイルのようなものをもってきた。開くと数枚だけのプリントが閉じられており、一番最初の紙には知らない男性の名前や大学などが簡単に記されてあった。ざっと見て、これがさっきの日記の筆者だろうと思った。紙には社会的な経歴よりも、彼がどんな人物で何が好きだったという個人的な情報が事細かに書かれていて、少し奇妙だった。そのページの最後の文章は女性が読み上げてくれた。


「彼は失踪した大学の友達を探して森へ入り、そして彼も失踪した」


 ページをめくると、覚えのある日誌の文章と、それで紹介される植物の写真がまとめられていた。

 女性は日誌の文が書かれた紙を指差すと、最後の日誌に続く文章を考えろ、と告げた。


2019,5,19

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