第6話
王太子を殺したことは、いくらなんでも不味いとエリザも理解していた。
だったらどうすればいいのかと考えても、全く妙案は思い浮かばなかった。
だがこのまま処刑されるのは我慢できなかった。
少なくても自分を罠に嵌めたシュルーズベリー侯爵とジョルジャだけは殺しておかないと、死んでも死にきれないと思った。
そこで二人を追おうと会場を見回したが、二人とも逃げた後だった。
エリザは急いで追いかけようとした。
だがパニックを起こした貴族達が扉に殺到しているので、そう簡単に追いかけられなかった。
彼らを突き飛ばしたら簡単に道は開くのだが、そんな事をすれば数多くの死者を出してしまう。
ほんの少し考えたエルザは、窓を突き破って外に出た。
公爵令嬢とは思えない行動だが、二人を追う事と、無関係な人間を巻き込まないようにと考えたエルザには、他の方法が思い当たらなかった。
後は簡単だった、二人の逃げ込みそうな場所を探せばよかった。
最初は馬車置き場を確認した。
シュルーズベリー侯爵だけならば、単騎で逃げるという事も考えられた。
だがジョルジャが一緒では、馬車が必要になる。
「ここにシュルーズベリー侯爵とジョルジャは来なかった?!」
エルザの勢い込んだ質問に王家召使も馬丁も驚いたが、正直に答えていた。
どのような服装態度であろうと、相手は貴族令嬢だ。
無礼な対応をすれば殺されることすらあるのだ。
シュルーズベリー侯爵家の馬車は残っていたし、王家召使も馬丁の証言で、シュルーズベリー侯爵とジョルジャがここから逃げていないと確認できた。
念のために駐馬場の王家召使にも確認したが、そこからも逃げていなかった。
エルザは仕方なく王宮の奥深くに向かうことにした。
エルザが復讐できない場所といえば、国王陛下や王妃殿下のおられる場所だ。
流石に二人の前で殺人は行わないだろうと、シュルーズベリー侯爵とジョルジャが考えるだろうことは、エルザにも予測できた。
エルザはしばし思案した。
王太子を殺す前なら、王太子の権力で自分とペンブルック公爵家が冤罪で陥れられていただろうと。
王太子を殺した今でも、子供を殺されたと国王陛下や王妃殿下が怒りだし、正当な裁判は受けられず、自分とペンブルック公爵家が罰せられるだろう。
そう考えると、ムラムラと怒りが湧いてきた!
全ては後継者の教育を怠った国王陛下や王妃殿下が元凶なのだ。
少なくともあんな下劣なモノを王太子に選ばず、他の王子を王太子にしていれば、私もペンブルック公爵家も名誉を傷つけられないで済んだのだ。
そう思うとエルザの腹が据わった。
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