第7話

「国王陛下!

 謀反人でございます!」


「王妃殿下!

 不義密通を犯しただけでは飽き足らず、王太子殿下を殺した極悪人でございます!

 どうかご成敗ください!」


 最初にシュルーズベリー侯爵が国王に嘘を吹き込む。

 次にジョルジャが王妃に王太子の敵を討てと唆す。

 王太子を騙してエリザを陥れようとしたように。


「おのれ、よくもダヴィデを殺したな!


「許しません!

 愛しいダヴィデを殺すなど、絶対に許しません!」


 ほんの一瞬だけエリザは動かなかった。

 だが本当にほんの一瞬だった。

 主に対する遠慮がほんの一瞬だけ心に浮かんだものの、直ぐにそんな事は腹に据えた覚悟が振り切ってくれた。


 エリザは言い訳を口にしなかった。

 恨み言も文句も言わなかった。

 主を討つと決めた以上、そんな事は戯言でしかない。

 謀反人として国王と王妃を討ち、国を奪うだけだった。

 父であるペンブルック公爵フェデリコが認めてくれ、自ら戴冠してくれればよし、認められず父に討たれるもよし。


 瞬時の出来事だった。

 王太子ダヴィデを殺した時と同じように、一足飛びに王と王妃に近づいたエリザは、平手打ちの往復で王と王妃の首を叩き千切りました。

 驚く暇も与えず、シュルーズベリー侯爵とジョルジャの首も叩き千切りました。

 ほんの一時間前には、全くエルザが思いもよらなかった、王位の簒奪が完成した瞬間だった。


 エリザに虐殺の意図などなかった。

 王太子以外の王子や王女、その他の王族を皆殺しにしたいなどとは思っていなかったが、王位に対する欲を持つ者は、簒奪者エリザの首を取り手柄にしたかった。

 王子と王女の外戚である生母の実家が、先を争ってエリザに襲い掛かった。

 だが全て返り討ちになった。


 ペンブルック公爵が急いで王城に駆けつけた時には、王の直系である王子と王女はエリザによって皆殺しになっていた。

 最初から当事者で被害者でもあったペンブルック公爵家には、誰も正確な情報を伝えなかった。

 だが、全ての王子と王女が殺され、次に殺されるのが王太子に加担していた自分たちなるかもしれないと恐れた貴族達が、急いで知らせたのだ。


 中には早くもペンブルック公爵が戴冠すると考え、忠誠を示そうとエルザを擁護する者まで現れた。

 その貴族は、エルザを陥れる場にいた次期当主である長男とその嫁を殺した。

 ペンブルック公爵はエルザから話を聞く前に全てを知っていた。

 だから、自ら戴冠する決意を固めていた。


 多くの貴族が後のことを真剣に考え、エルザを陥れる場にいた次期当主や長女を殺し、ペンブルック公爵の敵意から逃れようとした。

 中には長男や長女を想い、修道院に預けたり若隠居させることで助けようとした貴族もいたが、そんな家は戴冠したフェデリコによって族滅させられた。

 結局、エルザを陥れる場にいた者は誰一人生き残ることができなかった。



 

 

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