第4話

 痛い!

 斬られた顔が、身体が痛い!

 でもそれ以上に、心が痛い!

 女の顔を傷つける。

 多くの人間の前で服を切り裂き肌を露にさせる!

 これほどの恥辱はない!


「ワァハッハハハハッハ!

 ファハッハハハハハハ!

 アッハッハハハハッハ!

 いいざまだな、ジューリア。

 謀反人に相応しい姿よ!」


 主神フラ・マズダーよ、このような暴虐を許されるのですか!

 人間の神スプンタ・マンユ よ、正しい人間を護ってくださらないのですか!

 聖なる火の守護神アシャ・ワヒシュタよ、正義を守られるのではないのですか!

 動物界の統治者ウォフ・マナフよ、鳥を悪事に加担させるのですか!

 王太子達に神の鉄槌を!


 私の祈りは神々には届かなかったようです。

 いえ、善神が破れ悪神が勝利したのでしょう。

 鳥が続々と集まっています。

 まだ誰もついばまれてはいませんが、時間の問題でしょう。

 王太子達が暗い欲望に厭らしい笑みを浮かべています。

 それほど人を陥れ殺すのが楽しいのでしょうか?


「ワァハッハハハハッハ!

 ファハッハハハハハハ!

 アッハッハハハハッハ!

 矢張り神々はお前たちの悪事を見逃さなかったようだな、ジューリア。

 鳥達が集まってきたぞ!」


 分かり切ったことを口にして、私達が恐怖に恐れ戦くのを見たいのでしょう。

 そのような姿を見せるものですか。

 善神が破れ殺されるにしても、誇り高く死んでいきます。


「ギャァァァァアァアァアア!」


 一斉に悲鳴が上がりました。

 集まっていた鳥達ですが、私達を食べに来ていたのではなかったようです。

 善神の方々に祈りが通じていたようです!

 少なくとも、ウォフ・マナフには通じていたのでしょう。

 小鳥が私達を縛めている縄を啄み解放してくれました。


 拘束されていた私達が全員解放される頃には、王太子達は半死半生でした。

 王太子や側近だけでなく、私達を見物していたモノは、貴族庶民にかかわらず、鳥に体中を啄まれ、血を流し激痛に苦しんでいました。

 もしかしたら、王都の全ての民が鳥に襲われているのかもしれません。

 無垢な子供達まで襲われてなければいいのですが……


 私は王太子を探しました。

 服装で判断しましたが、顔ではわかりませんでした。

 すでに両眼玉も唇も鼻も喰われ、頬にも穴が開き、歯や歯茎が剥き出しです。

 身体もあちらこちらも啄まれていて、深く穴が開き血が噴き出しています。


「復讐させていただきます。

 いえ、楽にして差し上げましょう」


 私は近くに落ちていた剣を拾い、王太子の心臓を一突きしました。

 服装からアンナだと思われるモノも、心臓を一突きにして楽にしてあげました。

 苦しみを長引かせるのは人の道に反します。

 私は王太子達とは違います。

 さあ、気を引き締めて国を立て直さなければ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る