勇者ちゃん

プログラマーの勇者による

各異世界のことわり

書き換える能力が

あまりにもチート過ぎる為、

そこに派遣される勇者は

もう誰でもよいのではないか

という雰囲気が漂っていた。


この際、犬や猫でも

いいような気がしないでもない。


そもそも、何故勇者は

人間でなくてはならないのか、

そんな疑問すら湧いて来る。


-


新米の転移の女神である

アリエーネの元に

小さい女の子がやって来た。


『まだ、

こんな幼い子供なのに……』


ここにやって来たということは

人間世界での生を

既に一度終えているか

もう終える瞬間ということであり、

この見た目五歳ぐらいの幼女が

すでにそういう状況に

なってしまっている、

アリエーネには

そのことが不憫でならない。


この女児は人間世界で

横断歩道から飛び出し

車に跳ねられて、

神に召されることになった。


神に召されると言うと

神が無理矢理

召喚したようにも聞こえるが、

いくらここの神々と言えど

さすがにそこまで悪辣ではなく、

今回は純然に事故の結果だった。



そしてもう一つ、

ここに来たということは

彼女もまたこれから

異世界に転移する

ということでもあった。


しかもやはり上からの指示書には

『勇者』と書かれている。


『こんな小さい子が、

一人で異世界に転移して、

勇者になるの?』


アリエーネは心配で仕方がない。


『向こうでちゃんと

里親はいるのかしら?』


養子に行く訳ではないので、

異世界で里親や引き取り手が

いるかどうかと言われれば

いない可能性の方が高いだろう。



「……おねえさん、だれ?」


キラキラと大きな目で

見つめて来る勇者ちゃんは

あまりにも可愛らしく

アリエーネの胸を

キュンキュンさせる。


結局、

心配で仕方ないアリエーネは

異世界まで一緒について行き、

彼女の引き取り手を

探してあげるのだった。


-


子供がいない冒険者の夫婦に

引き取られた勇者ちゃん。


養父と養母がそのまま

勇者ちゃんの

パーティーメンバーとなる。


そして、勇者ちゃんもまた

高齢者の勇者並みか

それ以上に強い。


本人は全く

何もしていないところも

全く一緒。



勇者ちゃんに攻撃を仕掛けると

究極のバリアが発動し、

それにはこう書かれている。


『幼児虐待、絶対ダメ!』


攻撃は見事に発動した本人に

跳ね返される。



勇者ちゃんの仲間を

敵が攻撃しようとすると

仲間を庇うバリアが発動、

それにもやはり文字が浮き出る。


『いじめ、絶対ダメ!』



そして、

それでもまだ生き残っており

しつこく攻撃を繰り返して来ると

自動で最終奥義が発動する。


『通報しましたっ!』


その文字と共に

どこからともなくゲートが出現し、

中から全身真っ黒な

誰かが多勢出て来て

敵を強制的にゲートの中へと連行。


敵は二度とこの世界に

戻って来られないという、

大技中の大技。


一説では、その黒い人達は

勇者ちゃんファンの神々が

正体がバレないように

影ながら加護しているとも言われており、

アリエーネも実は

その中にいるかもしれない。


また演出の仕様が

プログラマーの勇者の趣味全開で

プログラマーの勇者

幼女好き疑惑まで浮上する。



神々の中にも

多数のファンを持つ勇者ちゃん、

いざとなると本当に

神々がガチギレして

出張でばって来るので

勇者ちゃんが負けることは

まず有り得なかった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る