第14話 霊道は幽霊の通り道らしい
突然現れた失礼なガキ(俺はまだ若い!!)が身の上相談と不幸話をし始めた。
なるほどな。まだまだクソガキ小学生のコイツには今、こいつの一家に起きている出来事は辛く苦しいもんなんだろう。
聴いてる限り、それまでの家は幸せを絵にかいたようなご家庭だったみたいだしなぁ。
「それでっ!このオジ…オニイサンが現れただけでこのお化け屋敷にうじゃうじゃいた幽霊がどんどん消えているのを見てて、僕の家のお化けを倒せるのは、このオジ…オニイサンしかいないと思って!!!!」
こいつ、オジサンと2回も言いかけやがったな。俺はまだ若い!若い……よな?ま、まぁこんなオムツが取れたばっかりのような
ま、まぁいい。取り合えず、こいつは切羽詰まっていた所にこの俺様が華麗に処理しているのを見て感動に打ち震えたってことだ。
「ふぅん」
「あの!お金はちゃんと払います!大人になってしまうと思うんですけど、それでもちゃんと働いてお返しします!!……今は無理だけど」
最後は小声になって俯いてしまった。
普通はこういう子供を見ると健気に見えるんだろうな。その証拠に最上ちゃんの目ん玉は真っ赤で決壊寸前だ。
「ふぐぅ!うぐっうぐぐぐ…ふぅぅん」
怪音がした所を見ると、おっちゃんが泣くのをこらえて、こらえきれなかった音が漏れ出ている音だった。顔が真っ赤になって鬼瓦みたいな顔になっててちょっとドン引いた。
ふと周りを見ると、出稼ぎ労働者の面々、おっちゃん、最上ちゃん達が俺をじっと見つめていた。
「な、なんだよ」
「加神さん……」
「おめぇ、受けるよな?」
「「「アニキ……!!!」」」
おい、外国人、俺がいつからお前らのアニキになったんだよ。つーか、お前ら感化されるの早くねぇ?……俺がこれで何もしなかったら悪者じゃねーか。っていうか俺なんも見えてねぇのに何をどうしろってんだよ。むちゃぶりにもほどがあるだろうがよ。
「最上ちゃん」
「ぐすっ……なんですか?」
「俺さぁ、何が起きてるか幽霊?がどこにいるのかも分からねぇんだけど?オカルト専門知識があるわけじゃねーしさぁ」
「はっ!そ、そうでした……」
「そんな俺に期待されてもさぁ。悪いけど何もできねぇっつの」
「うっ……」
このクソガキが気の毒なのは俺も同意する。するけど、大の大人が揃いも揃ってガキの言う事を鵜吞みにして二つ返事で請け負うってどうなん?
「や……やっぱり、だめ、です、よね」
下を見ると、クソガキが辛気臭せぇ顔して俺を見ていた。それを見た最上ちゃんが復活した。
「加神さん!私が、あなたの“目”になります」
「は?」
「あなたが視えないのなら、私が視ます。そして、会社でやったようにあなたに指示を出します!」
こぶしを握り締めて、決意を込めた顔で俺を見た。ええぇぇぇぇぇぇえ……。このクソガキ、案外したたかだぞ?コロッといきすぎだろうが。
「しかしよぉ最上ちゃん。加神の言うことも一理あるぞ。俺もこのボウズを助けてやりてぇ気持ちは変わらねぇが、ここは普通の場所じゃない。霊道なんだよ」
「あ……」
「今ここにいるやつらを消した所で、この場所から出て行かない限り、一時的な処置でしかない。また同じ事を繰り返すだけだ。俺らは解体処理をする間だけだからそれでも構わねぇが……」
「そ、そうでした」
「その霊道ってなに?おっちゃんも最初に言ってたよな」
「そうですね……ざっくり言うと、幽霊の通り道です。それがどこから来てどこへ向かって、どうなるのかは諸説あって分かりません。ですが、えぇと、気脈の流れに沿っているとも言われていますね」
「なんかよくわかんねーけど、生きてる人間が道を歩くように、死んだ奴らも専用?の道を歩いてるってわけ?」
「はい。土地とかに縛られていたり、浮遊している幽霊もいるので全ての幽霊がその霊道を歩いているっていうわけではないですが」
「へぇ……んじゃさ、この道を高架橋みたいに上げちゃえばいいんじゃね?そういう風にできんの?」
「へっ?!」
最上ちゃんがポカンとした顔で俺を見た。
だって、土地がないと電車だって車だって地面と上下に分かれてスペース作るじゃん。道ってんだから、
「た、確かに……。言われてみたら、そういう話をチラッと聞いた事はあります。でも、私にも霊道の詳しい仕組みが分からないので、それは指示の出しようがないんです」
「まぁ、まったくの頓珍漢な話ってわけでもないんだな?」
「え……えぇ。不可能ではないと思います」
そういう発想があって、実際に出来るってんなら出来るだろ。知らんけど。
自慢じゃねぇが、俺にも厨二病を患っている黒歴史があった。その時にスプーン曲げを成功させている。スプーン曲げを馬鹿にするなよ?あれは立派な潜在能力だ。イメージさえしっかりと描ければぐにゃぐにゃに曲げる事が出来る。
要は“そのイメージ”が大切だって事だ。つーことは、やる事は一緒だ。
だが……さすがにどれだけ鮮明に描いてもか〇は〇波は出る事はなかった。修行は(独自に)それなりにやったが、ついぞ、それは叶わなかった。
それで俺の黒歴史の時代は幕を閉じたのだった。
「えーっと……霊道ってどこからどんな風に通ってるんだ?」
「さすがに境目は曖昧なので、こっからここ!というわけにはいかないですが、大まかな向きは北東の方向から南西に向かっている感じでしょうか?」
「じゃ、俺らがいるのは道幅?があったとして、そのど真ん中辺りと過程すりゃいいか」
「た、多分ですけど」
「それが分かれば上出来だ」
そう言って俺は静かに目を閉じた。イメージを明確にするためだ。これは厨二病についたクセだ。精神統一の時はやはり、なるべく視覚からの情報を遮断した方が効率がいい。そして、カッコイイ。なんか。
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