第13話

こ、これは…私の想像以上の結果だわ。

目の前で起きた事に、興奮して知らず体が震えていた。

蒲生さんも、スタッフのみんなも目の前で起きたことが信じられずに周りをキョロキョロして、さっきまで自分たちを悩ませていた現象が止んでいる事に気づくと、わっと加神に走り寄ってお礼を言っている。


「お、おい!チューすんなよ!俺様のほっぺはそんな安かねぇんだよ!」


加神が喜びからの興奮で頬っぺたにキスをしてくるスタッフの顔を嫌そうに押しのけている。まったく意に介していないスタッフ。

ふーむ。これは、たんぽぽ組だけのお仕事以外にも手こずっている案件に出向いて特殊処置をしてもらうしかないわね!


「こらこら。まぁた悪い顔してっぞ?その顔の時は頭の中でソロバン弾いている時の顔だな!」


いつの間にか輪の中から抜け出して私の横に蒲生さんが立っていた。

思わずほっぺを両手で挟んでモニモニする。そ、そんなに悪い顔してた?


「でも、この加神さんを使えばかなり手こずる案件がスムーズにすみますよね。皆さんの作業効率が上がる。上がったら、どんどん処理が進む、進むとそれだけの売り上げが…」

「こらこら。また悪い顔になってる」


はっ!まずい。無意識に…。


「こほんっ。まぁ、でも、そういうわけです。みんなハッピーです」

「そうだな。その通りだ。今回みたいな案件とかだとかなり助かるよ」


そんな話をしていたら、横を小さなものが走り抜けて加神さんたちの方へ向かった。


「おおい!ボウズ!あぶねぇから敷地の中に入っちゃダメだぞ!」


蒲生さんが慌てて後を追いかけた。


「お願いします!助けて下さい!!!」


加神に向かって小学生の男の子が土下座をした。急に現れて土下座をした男の子に皆がギョッとして固まった。追いかけていた蒲生さんも立ち止まっている。


「は?なんだなんだ。どうしたんだよ」


目を丸くした加神が聞いた。


「お願いします!僕を…僕たち家族を助けて下さい!!もうオジサンしか頼る人がいないんです!!!」


悲痛で懇願する男の子にゆらりと近づいて、ゆっくりとしゃがんで目線を合わせた加神はー


「かっ…加神さん?!」

「いいいいいいひゃい!」

「おいコラ坊主…誰がオジサンだって?あぁ?」


あろう事か、その子の両のほっぺたをギリリと捻りあげた!あまりの展開が続いて一瞬フリーズする。

同じようにフリーズしていた蒲生さんが慌てて駆け寄った。


「お、おい。加神…やめろよ」

「駄目です。人に頼む言葉がなってな…へぶっ!」

「やめんかー!」


思わず持っていたクリップボードで加神の頭をひっ叩いてしまった。


「いってえ!暴力はんたーい!」

「アンタが言うな!アンタが!!」

「坊主、どうした?何があったんだ?」


慌てて男の子を見ると、痛々しいくらいしょんぼりしていた。


「やっぱり、ダメですよね…勝手に入ってごめんなさい」

「何があったか聞かせてくれる?」


こくりと頷いた男の子が、自分たち家族に降りかかった不可解な出来事を話し始めた。

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