第25話

「それはどういことか。」


国王として溺愛する下の子にまで影響が及ぶ可能性があったかもしれないと鬼の形相になる親父。


「彼は昔はこの国を変えるくらいの気概があったはずの人物です。それが何らかなの形で歪まされたような歪な精神状態のようでした。ちょうど今回の兄になりかけているような。」


「それでアレンは勉強を抜け出したのか。」


納得した顔をする親父であるがここで訂正しておかないと仕事が増える気がする予感があったので訂正しておく。


「いいえ、ただ単にやりたくなかっただけです。」


「おい。」


おっとあまりにもキレのあるツッコミに固まってしまった。決して親父の眼光が強くて固まった訳では無いぜ。親父が恐くて固まった訳では無いぜ。大事なことだからココロの中で二回言った。


「ハハハ、君らしいね。」


どうやら象のおじさまには俺のココロを見透かされたようにバレバレだったみたいだ。俺がポーカーフェイスでココロの表情を変えるたびに笑っている。本当に何者なのだろうか。


「まあしかし、私も君の兄君達を拝見したけど良くない氣が巡っていたのは事実かな。あくまでも私から見た場合で良くないものだから一概にも悪いとは言えないけど。」


このおじさまは政治家か!

アレだよアレ、基本的にはとかってつけて他の可能性も視野に入れさせる言い訳じみた奴。俺も良く使うけど。だって自分に責任を追及されたく無いし。

社会とかだとキャリアを盾に言う人が結構いたから勝手に身についちまった醜いスキルだがな。そいつをボイスレコーダーで録音しておけばあら不思議動かぬ証拠になる訳だ。


「それはどう言う感じなのか具体的にお願いできる?例えば味覚で。」


「ふむ味覚でか。中々、群れの長に向いた感性だね。味覚で言うなら苦味と渋味が多めでちょっと辛味があるかな。」


「辛味はピリピリした感じだった?」


「痛いところ突くなあ。辛味はピリピリする感じだよ。」


「アレンよ。今ので何がわかったのだ?」


どうやら王様である親父も今の会話で何がミソなのかわからなかったらしい。


「質問を質問で返すけど毒の味でよく言われるのは?」


「はて?苦味の強いものや辛味がそうピリピリと、そう言うことか!」


苦味が強いものの中には薬効成分が毒と同じだからということもあるが辛味は訳が違う。山椒を除いて殆どが毒の表現に舌にピリピリとした辛味があると言われているからだ。

つまりだ、象のおじさまにとっては確実に毒に近いモノが見えたということ。象のおじさまの人間性?によるが表面上では少なくとも善人、もしくは見聞を深めた人という印象、これで悪人ならことは変わってくるがそれは無いと思いたい。


「これは早急にせねば。」


国王は立ち上がると途端に扉が開かれた。

そこには果物の入った草編みかごを持った母サンタナ妃が心配そうな顔でこちらを見ている姿があった。


「アレン、もう大丈夫なの?」

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