第6話

さてさて早速工房に行きなんとなーくそれといった感じで伝える。


「おっちゃん、もっと高温にして鉄が液化するかしないかの具合で鉱石を取り出してくれ。」


想像を絶する汗を掻きながらまだやるのかという感じでやらされる鍛治師の親父は俺に言われるがままに炉を高温にしていく。


実はこの世界の炉は魔法でコーティングすることでいくらでも強度を上げられるようなっているらしく炉の制作はそっちのけで高温にしていくことが可能らしい。


「よしこんなもんだ。あとは炉の中身を全部取り出して黒い塊だけ拾ってくれ。」


「まあしょうがねえはな。【この世 我らの住処 与えし偉大なる大地よ 我ら 触れぬ異形を 掴め アースハンド】」


詠唱を唱えたおっさんは土の手のひらを創り出し、炉の中のものをすべて取り出した。この国では魔術は詠唱、もしくは媒介を行って使うことが可能で基本的に魔力量や自分の適性に左右されるらしい。自分は魔力を持っていないだろうが関係ないが(すげえ持ってるどころじゃない人)


「あーこの黒い塊が鉄か?」


「あとそれを加工する。」


「今日はもう魔力がすっからかんだから後日にしてもいいか。さすがにきついわ。」


「いいけど成功報酬と日々の給金はこのくらいで大丈夫?」


俺はあらかじめ用意していた王、もとい父上に渡された金額から成功報酬とおっちゃんの技術料、場所代、他の仕事ができなくなる分の日当を執事に算出させていた。その額、銀貨10枚


「坊主、いくら怠けていいからって計算ぐらい自分でやれよ。執事の出した金額は多すぎるは!」


「えーでもパンが10個しか買えないくらいの日当じゃん。」


「阿呆、それは庶民の食べる黒パンではなくて白パンで計算した時の金額だから黒パンだと1000個は買えるぞ。」


ここばかりはあまり怠りすぎると痛い目をみそうだと上級階級の知識だけでなく平民の知識を学ぶことを誓おうと思いつつ、やっぱりサボることにした。


「じゃあ、このくらい?」


俺は銀貨を5枚にして渡した。


「それでも多いが。」


「口止め料込でおっちゃんにしか基本頼まないし。」


「普通、技術とかって学者が作るもんじゃないのか?」


「うちの国は少なくとも研究より経験でモノを語る人が多いからね、マニュアルもうまくできてないから新しい技術を作るには教科書から作っていかないと流石に無理だから大体俺の言うこと聞いていくれるおっちゃんに聞いているの。」


「俺はオマエの馬車馬かよ。」


「休みたいときは休んでいいから。俺もその間にサボってるし。」


「こんなのがこの国王子でいいのか。」


「庶民派ってことで。」


「俺も最初は驚いたけどいまだにオマエが王子って信じられねえ。」


この国の行末にあまり関係のない継承権の低い王子とは言えこの国が心配なおっちゃんなのであった。


スキル『怠力』継続発動中

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