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「Zzzzzzzzzzzzzzzzz」


「おい坊主、いい加減起きろ。」


「Z Zzzz Zzzzzzz Zzzz Zzzzzzzzzz Zzz Zzzzz Zzzzz Zz Zz Zzz Z Z Zz(え、めんとくさい)」


「いびきの文字列の東洋勇者語で答えるな。」


この国の文字はギリシャ語と英語を掛け合わせたような文字が用いられているが文体は日本語に近く。異世界召喚者の使っていた文字列は各国で共有され学校でもどれか一つは先行するよう言われているため比較的文法から覚えやすい日本語か文字からわかりやすいギリシャ語もしくは英語を学ぶものが多い。


今回は縦横のあいうえお順のモールス信号のように使ったことでわかったらしい。


「おいおい。お前の言う通りやってたらとんでもない業物ができたんだぜ。完全品を見たくねえのか?」


「ふわあ、しょうがないなあ。」


「しょうがないってお前、自分が依頼したことだろう。」


「もっとのんびり休めたのに。」


「おいおい、こっちにはちゃんと見張りの兄ちゃんだっているんだぜ。しっかりとした仕事をしねえと首がはねられちまう。」


「んでどのくらいできたの?」


この俺様の昼寝を邪魔したんだ。相当な業物ができていなければただではいかないぞ。


「ほれ、これが剣として作った渾身の力作だぜ。」


ギラリン


ときらめく刀身は輝かしく鏡のように美しくアレンの顔をくっきり移すくらいには綺麗で鋭利な刃物だった。


「んで肝心の金切りばさみや包丁にする算段は付いているの?」


「それはもちろんだ。きちんとメモはしたし何回か試し切りもしたから今までの創造を絶する切れ味になっているぜ。」


ここまでやっちまったのならしょうがねえ、腹を決めて国王がやろうとしてると策に乗ってやるほかねえ。いざ、刀を掴みそこら辺の鉄板に切り付けてみた。


「おっちゃん、これって……」


「ああ、すげえな。俺がやった時は一枚切るのがやっとだったが坊主がまさか30枚切っちまうなんて。」


(そっちじゃねえええええ!!!)


と心底心の中で思いながら、この剣の切れ味に驚いていた。おっちゃんでも鉄板が切れたことには何の疑問も残らないが自分が切った時に何の抵抗すら感じさせないその切れ味が出てしまったことが自分の仕事が増えそうな予感がしてたまらなくなっていた。


「おっちゃん、これ大丈夫だけど大丈夫かな。仕事が増える的な意味で。」


「無理だな。これからお前にも俺にも仕事増えると思うぞ、どんまい。」


おっさんに肩をたたかれそのまま項垂れる俺であった。一応の護衛をしている騎士たちは苦笑いを浮かべるしかないのであった。

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