第3話
王都 工房丁鍛冶場3-12-18
こんな現代日本のような住所は過去に読んだ異世界召喚者が関係しているらしい。しかしながらこのように過去に今回と同じような異世界召喚者を読んでいるにも関わらず発展具合を見るとそうでもない感じであることから内政のやり方など誰もがわかる基礎知識を持つ人間しかやってきていないことが伺えた。
そしてどうしてこんなところにいるのかというとサボるためにである。
「おっちゃん、今日もお願い。」
「坊主、今日も飽きねえな。なんで鍛冶の火をずっと見てるのが好きなのかわからねえけどまあ、邪魔はするなよ。」
そう、俺は鍛冶に使われる火を見るためだけに来たのだ。炎を見るは良い。この世界にはアニメもなければ本は高級品ときた、図書館ですら金をとられるのだ。金をとるということは帳簿をつけるということ。即ち痕跡が残るそれでは騎士たちにばれてしまう。サボりとはバレないことに意味があるのだ。そもそも日本の今の若者はやる気のあるなしが二分化されている。ある特定の状況下をそろえなければ集中力を持続できなケースも存在するがそれは置いておく。
やる気のない人間は何をやっても何にもやる気がないのだ生産性の向上など銘打っては言るが仕事にやりがいを求めろというのもパワハラだし仕事以外にも口出す馬鹿な人間はよくいる。中小企業はいまだにその垣根が残っている。それが一人暮らしなどになれば愚痴を言う人間がいなくなりさらに新入社員の離職率が増加する。
俺はそんな企業にいたのだ。よく会社辞めなかったなと思う。一応総合職にあたる企業で優秀なものと劣等的な者には大いに差が出る。それでもやる気は出ないのである。やる気を出せというが、団結力とやる気の出し方はまるで違う。
こんな愚痴を思うために炎を見つめているわけではないが炎を見つめることで目の洞察力に身を任せ他のことを妄想するのは楽しい。授業をやりながらサボる極意の一つでもあるが、人は本当にやりたくないことに直面すると現実逃避を始める。ここで脳の想像力の分野が発達している人間ならばさらなるステージに行けるのだ。現実のチャンネル化である。要は夢のチャンネルと現実のチャンネルのオンオフを可能とするしょうもない技術である。ちなみにあくまでこれは想像力という点で優れているので表現力に関しては必要ない。
そんなこんなで俺は鍛冶の火を見続ける。やりたくないことよりも楽しいことを考えていたいシンプルな精神で。
「ってかこの坊主、暇なのか。こんなにも炎を視れるって夏場なのに川に行くとか考えねえのかな。まあこの坊主がほのを見てるときはなぜか調子がいいからいいんだが。」
スキル『怠力』継続発動中
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