第167話 年末年始SS 帝国貴族の新年①

完結と言った舌の根も乾かないうちにSS投下しますw

3話くらいの予定。

新年と言える間に投下終了するといいなぁ……

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 年の移り変わり、今が去年になる明日。新年を祝うパーティーを行うことになっている。これは遙か昔、神の御使いが地上で奇跡を行われたとされる日を年の始めとしたことを起源とする帝国でも聖国でも、それ以外の多くの国々でも共通のイベントとなっている。

 当然僕たちもお祝いをするのだけれど。

「ダンスねえ」

僕はミューと顔を見合わせため息をつく。

僕たちはこれまで新年のお祝いといえば、年の最後の日から少しだけ贅沢な食事を作り、あ、ここでホワイトグースのローストだけは外せないのだけれど、それを食べながら甘いお酒を飲み一晩過ごしそのまま新年の朝に「新年おめでとう」とキスと共に挨拶をする程度だった。

しかし、帝国で男爵位をいただいた以上僕達もそれだけと言うわけにはいかない。年に1度の皇帝陛下の御前での祝賀パーティー。全貴族を集めた帝国最大の社交パーティーだそうだ。それへの招待状が届いた。金で縁取られた豪華なそれは現実的には招待ではなく強制だそうだ。

問題は、叙爵して間もない僕達は貴族としてのふるまいも知らない、パーティーでは招待された貴族がそれぞれパートナーを伴いダンスをする習わしだとか。

「やっぱりグラハム伯にお願いするしかないか」


「ふ、はははは。上位魔獣にさえ臆することのないお前たちが、クククッだ、ダンスごときに、プハハハッハハ」

大笑いするグラハム伯に僕もミューも憮然としている。それでも

「ま、まあ必要なことは確かだからな。うちからダンスの指導役を、ププッ……、お、送って、くくく、やる。社交場での貴族としてのマナーも、くぅぅくくく、指導者が欲しいだろうから、良い指導者を紹介してやる。ぐふふぅぅ、が、頑張って覚えろよ」

笑いを抑え切れず、それでもグラハム伯は僕達にダンスとマナーの教師役を紹介してくれると約束してくれた。


ダンスの先生は厳しかった。

「はい、リズムに合わせて。もう少し優雅に。それでは決闘のようですよ」

「背筋を伸ばして」

「もっと笑顔で……」

「そこでターンを……」

「お相手と一緒に息をあわせて……」

「そこはスパッと入るのではなくもう少し余裕をもたせて……」

「足がバタバタしないのは良いですが、すり足ではダンスでは無いですよ」

僕にしてもミューにしても身体を動かすこと自体は嫌いではないのだけれど

「これは、ある意味上位魔獣狩りよりキツイなあ」

そんな風にこぼす僕の傍らには、連日の指導にぐったりしたミューがそれでも寄り添ってくれていて

「うん、きつい。優雅にってどんなの。あたし達には縁の無かった世界だもの分からないわよね」

「でも僕達の後ろ盾になってくれているグラハム伯に恥をかかせない程度にはならないとなあ」

僕とミューは溜息をついた。



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読者の皆様、本年は「僕が守りたかったけれど」を応援頂きありがとうございました。思い起こせばフッとした思い付きで書き始めた本作ですが、非常に多くの方に応援いただきとても嬉しい思いの中で書き続けることが出来ました。

本編は完結しておりますが、たまにこのようなSSを不定期で投下するかもしれません。よろしければお読みいただけると嬉しく思います。

また、実は続編のアイディアが降ってきており、ひょとすると……という状態です。この辺りは内容を精査して書くか没にするか決めますが。

続編を書くかどうかはともかくとして、来年も頑張って書いていきたいと思います。

楽しいお話を書いていきたい思っておりますので、来年もよろしくお願いします。


よいお年をお迎えください。

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僕が守りたかったけれど 景空 @keicoo

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