第105話 伝説の祝福

「ようドラゴンスレイヤー」

「おはようございます。グラハム伯その呼び方はやめてくださいよ」

「過去に数例しかない肩書だ諦めろ。ましてやたった2人で成し遂げたとなればな」

「はいはい。もういいです」

調査から帰還した僕たちのエイリヤでの朝はグラハム伯との雑談から始まった。

「調査は成功だったようだな」

グラハム伯は調査の結果に満足だったようで労ってくれた。

「ええ、グラハム伯が集めた調査団だけのことはありましたね」

「そして、今回はドラゴンか」

グラハム伯のニヤニヤした笑顔が気になる。

「パレードは嫌ですよ」

「そう言うな、街の人間はお前たちの顔を見たいんだ。それもきちんと評価されたお前たちをな」

そう言われてしまえば僕たち口は拒否の言葉を紡ぎだすのは難しい。エイリヤの街の人々には良くしてもらっているのだから。

「分かりました。ただし、ドラゴンの躯を晒すようなことはしないとだけ約束してください。あれは殺し合った敵でしたが、それと同時に単なる魔獣ではない何かを感じさせるものでしたから」

「そうね、最後にはなんか祝福をくれたものね」

ミーアの言葉にグラハム伯が食いついた

「何、ドラゴンの祝福だと」

「ちょ、ちょっとグラハム伯食いつきが怖いです。どうしたんですか」

「ドラゴンの祝福というのは過去のドラゴンスレイヤーの逸話で存在だけが伝わっている伝説の祝福だからな」

「存在だけってどういうことですか」

「どういうもこういうも、よくわかっていない。そういうものがあるという事だけが伝わっていて効果なんかはまるで分っていない。それがドラゴンの祝福だ。お前たち自身で分かるか」

僕とミーアは顔を見合わせて

「実は検証しきれていないのですけど」

僕たちは風属性の魔法と桁外れの回復についてだけ話すと

「ただでさえ万夫不当の2人に魔法ととんでもない回復力か。もう本当に2人で1国の軍を凌ぐ戦力だな」

と苦笑されてしまった。

「力はあるに越したことはないのでしょうけどね。ちょっとこういうのは困惑してしまいますね」

「ま、いきなりドラゴンから渡されてもってところか。ところでドラゴンといえば素材としても最高級のものになるんだが、どうするんだ」

僕はミーアを見て

「ドラゴン素材の防具を作りたいですね。あと何に使えるのか分かりませんが、しばらくは手元においておこうかと思います。幸い僕たちの魔法の鞄は容量に余裕がありますし、時間遅延の効果もありますから」

僕がミーアと話し合っていた内容を話すと、グラハム伯は嬉しそうな顔をして

「しっかりと前向きになってくれたな。この様子ならこれを渡してもよさそうだ」

そう言って僕たちに渡されたのは随分と立派な封蝋を施された羊皮紙だった。どこからかの手紙だろう。

「これは」

僕が疑問を口にすると。

「自分たちの目で確認してみろ。一応華押が本物だということは確認してある」

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