サニレタはちしゃだけどちしゃであるラプンツェルはサニレタではない
/*登場人物:スーパーの店長 隣家の男/
店長「あんたさあ、こんな128円のサニーレタスなんか万引きして、それで社会的に終わりっていうの情けなくないの?」
万引き犯「いいえ? こういうの値段じゃないっしょ?」
店長「それ、盗ったもんの安さに開き直った相手を盗られた側が責めるときの台詞だからね?」
万引き犯「はあ」
店長「まったくもう……あれ? あんたの顔どっかで見たことあるな」
万引き犯「会ったことありますよ」
店長「うーん、思い出せない」
万引き犯「うち、このスーパーのとなりっすから。何度も挨拶したことあるっすよ」
店長「あ」
万引き犯「店長さん、客商売失格っすね」
店長「うるさいよ! だいたい、あんた何でそんな面の割れた店で万引きなんかするんだよ! この地域で肩身が狭くなるとか考えないの?」
万引き犯「急ぎだったんで」
店長「急ぎでサニレタが必要になる用事ってなによ?」
万引き犯「サラダ作りたくて」
店長「盗んでまでサラダ食いたいの?」
万引き犯「もうすぐうち、子どもがうまれるんすよ」
店長「はぁ」
万引き犯「で、かみさんがサニーレタスが食べたい気分って言ってるんすよ」
店長「だったら買えよ」
万引き犯「いやサイフうちに置いてきちまって」
店長「隣なんだから取りに帰れよ!」
万引き犯「いや急ぎだったんで」
店長「あんたとは話にならん! ちょっと奥さん呼んでよ。ほら、そのスマホで」
万引き犯「あ、無理っす」
店長「なんで?」
万引き犯「かみさん病院にいるっす。生まれちまってるっす」
店長「え?」
万引き犯「俺達の子っす。ほら、LINEで子どもの写真も送ってきてるし」
店長「おめでとう」
万引き犯「女の子っすよ」
店長「へえ、可愛いね」
万引き犯「あんたがサニレタごときでごちゃごちゃ言わなかったら、俺出産に立ち会えてたはずなんすけどね」
店長「自業自得だろうが」
万引き犯「あんた、人一人生まれたんすよ? 一世一代の素晴らしい瞬間に、父親が立ち会う権利を侵害しておいて、あんた人間の心もってるんすか?」
店長「それはそれ、これはこれ、でしょうが!」
万引き犯「いーや、それはこれっすよ。お祝いはそのサニレタでいいっす。ほらもう店頭に出せないっしょ、それ」
店長「何言ってんのあんた」
万引き犯「それこっちの台詞っす。あんた祝う気あるんすか? あんたの出方によっちゃあ、うちの子の育児手伝わせてやってもいいんすけど?」
店長「なんで?!俺は忙しいんだよ!」
万引き犯「さっきうちの娘、可愛いって言ったっすよね? 育児参加嬉しくないっすか?」
店長「あんた正気か」
万引き犯「娘の命名権もあげるっすよ」
店長「いらないよ! あんた自分の子をなんだと思ってんだ! 俺がもし、サニレタって名前にしようって言ったらどうすんだよ」
万引き犯「はい、サニレタね」
店長「えっ?! 待ってちょっと待って奥さんにLINE送るのやめて」
ピロリン
万引き犯「かみさんもいい名前だって喜んでるっす!」
店長「あんたら本当にそれでいいのか?!」
万引き犯「いいっすよ? じゃあ俺はこれで。サニレタありがとうっす」
店長「いや待って! 待ってってば!」
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