ひょう疽と虫歯と生理痛

※一人称(私・俺・僕・朕など)や二人称(君・あなた・お前・ハニーなど)はご自由に変更してください。

※独演、方言への変更は大歓迎です。

※SE・BGMはなくても構いません。


男「愛してる」


女「私も」


男「心の底から愛してる」


女「うん、私もすっごく愛してる」


男「これから、君をもっと理解していきたい。君の痛みも苦しみも分かち合いたいんだ」


女「ありがとう、すごくうれしい……」


男「まずは君の巻き爪の痛みとか」


女「……は?」


男「……うっかり変な風にカットしちゃうと蒸れて膿んだりするよね。ひょうになっちゃうよ」


女「えっ」


男「(遮って)だからね、俺は巻き爪じゃないけど今足幅に合わない靴を履いて、つま先をめちゃめちゃ圧迫して痛みを我慢してる。それから虫歯を削る痛みも……明日歯医者に予約入れてるよね。俺も寝る前に欠かさず飴を舐めてから歯を磨かずに寝るようにして虫歯を育ててる。俺たちの愛を育てるように」


女「(怯えて)な……なに言ってんの?」


男「それから生理痛とか」


女「ちょ……待っ……」


男「ずっと君を見てたからわかるんだ。君、生理中は冷たい飲み物飲まないよね。それによーくよーく嗅ぐと(スンスン嗅いで)匂いがするんだ。絶妙なメスの匂いが。今日は一日目かな……だんだん痛くなってくるころ合いだね」


女「気持ち悪っ!!」


男「ふふ、生理痛はねえ……どうやって分かち合えばいいかわからなかった。生殖に関する不要な組織を捨てる行為は、男には痛くないっていうか気持ちいいからね……だからどうすればいいか君に意見を聞きたいと思って」


女「(男の台詞に被せて絶叫)これでも喰らえ、変態!」


  SE:女の台詞に被せて重い打撃音、倒れる音


男「(SEに被せて苦痛の声)……ぐはあっ!」


女「……二度と私の前に現れないで。連絡もしないで。(可能ならここから台詞をなだらかにフェイドアウト)ああ、もう最悪! 言いふらしてやる!!」


  SE:遠ざかるパンプスの足音

  BGM:悲しげでドラマチックな音楽フェイドイン


男「……そうか……これだ……一方の性別しか持たない器官が生む苦痛……性別が違えば理解しえない痛み……これだ、この痛みだったんだ」


  BGM:終了。フェイドアウトでも終わりまで流しても。


  ――終劇。

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