ヒューマンドラマ

パーティの後で

 登場人物(ただし、名前・性別・方言変換はご自由に)

  椎山…傘を差した、結婚披露宴帰りの若い男

  山内…終始元気のない、結婚披露宴帰りの若い女

 

〇往来・雨音・傘に当たる雨の音。

    傘を差した男、濡れて歩いていた女に追いつき傘をさしかける。

 

椎山「さっき、披露宴にいた人ですよね。たしか義弘よしひろと同じ課の山内さん」

山内「(警戒するように)どちら様ですか」

椎山「椎山しいやまっていいます。新郎友人代表でスピーチしてたでしょ」

山内「……何か御用ですか」

椎山「いや、傘持ってないのかなって。これどうぞ」

山内「(そっけなく)タクシーに乗るんで結構です」

椎山「タクシーが来るまで時間かかりそうだし、あんまり濡れてると乗車拒否されますよ。返さなくてもいいんで、使ってください」

山内「(やや間をおいて、小声で)ほっといてもらえませんか」

椎山「え?」

山内「(少々涙声)ウザいんで、あっち行ってもらえます?」


    間。


椎山「ウザいでしょうけど着物って濡れると大変なんでしょ? とにかく傘どうぞ」

山内「余計なお世話です」

椎山「あ、下心とかじゃないですよ。ただ、俺もあなたと同じ気分なんで、声を掛けたくなって」

山内「何のことですか」


    間。


椎山「(自虐的に)俺、さっきの新婦に義弘と二股掛けられて、切り捨てられたんですよ。招待状もらうまで気が付かなくて、義弘からスピーチ頼まれたときも、ほんと涙目でね……笑えません?」

山内「え」


    長めの間。


椎山「(静かに)あなたのことも義弘から聞いてました。あいつにとても尽くしてくださってたとか」


    山内、ここから終劇まで嗚咽。

   

椎山「(少し間をおいて慰めるように)俺も、あなたも、くそ野郎とくそ女に引っ掛かってたってことなんですよ。あいつらはお似合いです」

椎山「(少し間をおいて、何かを振り切るように)お節介すみません。でも傘は使ってください。じゃあ」


    ――終劇。

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