からころりん
*登場人物(二名とも性別不問、20歳過ぎたばかりの大学生)
*注意事項
BGMはご自由に。方言への変更は可。それ以外の改変禁止
*以下、本文
場:千早の住んでいるアパート
SE:アパートのドアベルの音、かなりの間をおいてドアを開ける音
千早「あ、神代? どしたの?」
神代「お見舞いに来たよ。足大丈夫?」
千早「……え? 順調に歩行困難だけど……今日みんなでキャンプ行くんじゃなかったっけ?」
神代「みんなは行ってる」
千早「神代も行くって言ってたじゃん」
神代「行かないことにした」
千早「なんで」
神代「あがって話していい?」
千早「あ、散らかってるけど」
神代「いつものことじゃん。おじゃましまーす」
SE:室内を歩いてリビングへ行く音
千早「で、何でキャンプ行かなかったの」
神代「秋山と取り巻きが昨日参加するって言ってきたから、テキトーに理由つけて行くのやめた」
千早「秋山? ああ、神代あいつ嫌いだったよね」
神代「嫌いじゃない! 大っ嫌いなんだよ!」
千早「足骨折して引きこもってる間にそんなことがあったんだ」
神代「あーあ……楽しみにしてたのに」
千早「天気もいいし
神代「温泉に入れるキャンプ場だったのに」
千早「あー、ギプス外して湯舟に浸かりたい」
神代「BBQもさ……栗田がA5和牛持ってくるって言ってたんだよ? 栗田の父ちゃんって、ウォルナットマートの社長だって。いい肉食べ放題だったかも」
千早「(ため息とともに)あーあ、肉食べたかったな」
神代「(ため息とともに)羨ましがってもしょうがないよ。そろそろお腹空かない?」
千早「空いた。ここんとこ、まともなもん食べてないんだよね」
神代「そうだろうと思った。ご飯作ってやろっか?」
千早「え……ありがとう。材料は」
神代「持ってきた。醤油やみそ、使っていい?」
千早「うん、自由に使って。何作るの?」
神代「ご飯とみそ汁とサラダ。それと、いつでもどこでも
千早「何それ」
神代「百人一首の『ちはやふる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは』って歌、知ってる?」
千早「それくらい知ってるよ」
神代「それがヒント。当ててみ?」
SE:ここから次のSE指定まで、戸棚や冷蔵庫の開閉音、洗米、
ガスの着火、野菜を切る音を台詞の裏で適当に流し続ける
千早「もっとヒントない?」
神代「水くくるって出てくるけど、水じゃなくて油」
千早「油?」
神代「本日は低カロリー高
千早「うーん」
神代「そろそろ揚げるよ」
千早「あ、わかった! えーと、もしかして……竜田揚げ?」
神代「あったりー」
間
SE:揚げる音
千早「おおー、おいしそう」
神代「こうやって野菜も竜田揚げにするとおいしいんだよ。根菜とかカボチャとか」
千早「(もぐもぐしながら)ほんとだ」
神代「つまみ食いすんな」
間
SE:食卓に料理を並べる音、座る音
千早「作ってくれてありがとう。いただきまーす」
神代「いただきまーす」
SE:揚げ物のさくっとした音
千早「んー、さっくさく! そしてジューシィ!」
神代「胸肉でも十分おいしいよね」
千早「おいしくて安いなら最高じゃん」
神代「たしかに」
千早「(もぐもぐしながら)花より団子っていうか、
神代「(笑って)
千早「(もぐもぐしながら)あ、ビール欲しいな。冷蔵庫からとってきて」
神代「アルコールはダメ。ギプスしてるくせにまた転んだら危ないって」
千早「えー?」
SE:食事の音
神代「(長めの間の後、ため息)」
千早「どした?」
神代「……なんか後味悪くてさ」
千早「え? 悪くないよおいしいよ」
神代「そうじゃなくてさー、ドタキャンしてキャンプのメンバーに申し訳なかったなって……秋山は別だけど」
千早「(間をおいて)今度みんなでまた行こうよ、紅葉狩り。そこで埋め合わせしたらいいじゃん」
神代「足が治るの、一か月くらい先でしょ。
千早「いつでもどこでも紅葉狩りできるって言ったの、神代だよ? (百人一首の読み上げ風に)『なんかよくわかんないけど竜田揚げからころりんイェーレッツパーリィ』」
神代「(笑って)
千早「(笑って)在原さん、意外とノリノリでパリピっぽいやつだったんじゃないかって思うよ?」
神代「(笑う)」
SE:食事の音フェイドアウト
――終劇。
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