灯台のしたは真っ暗
*登場人物
*場
ほどほどに田舎の海水浴場
*以下、本文
SE:指定箇所までずっと海水浴客のはしゃぐ声。最初から終劇まで波の音。音量は適宜調節のこと
朋子「あら、もう泳ぎ疲れたの?」
吉雄「待ってたのに全然来ないから迎えに来た」
朋子「私はここで荷物番してるって言ったじゃない」
吉雄「貴重品はコインロッカーだし荷物番はいいって。水着も持ってきてるんだろ?」
朋子「一応下に着てるけど日焼けしたくないお年頃なの。それに水着姿ではしゃぐおばちゃんなんて誰も見たくないわよ。私なんかを構ってないで、あっちで若い子のビキニ見てきたら?」
吉雄「(たっぷり間を置き、語調を変えて真剣に)……なあ、本当は来たくなかったんじゃないか?」
朋子「嫌だったら来ないわ。海は好きだし、いい気晴らしよ」
吉雄「じゃあ行くぞ」
朋子「え? なに? やだ、引っ張らないでよ! 待って! ちょっと!! メイク崩れちゃう! やめて!(アドリブで叫び続け)」
SE:海に入っていく音。海水浴客の声フェイドアウト
朋子「もう足がつかないんだけど! ちょっと、聞いてるの?!」
吉雄「朋子、全然わかってないだろ」
朋子「何のことよ!」
吉雄「朋子がとっとと結婚した時俺がどんなに凹んだか! 離婚してこっちに戻ってきた時どんなに嬉しかったか! 朋子を海に誘うのにどんなに勇気が要ったか!」
朋子「何? 何言ってるの?」
吉雄「いい歳したおっさんが、今、ちょっと泣きそうなんだぞ! 子どものころからずっと好きだった子に振られるのが怖くて!」
朋子「(しばらく間をおいて吉雄の言葉を味わった後)……じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったの。こんな歳になって今更すぎるわ。離婚の原因知ってるでしょ。夫が若い子を選んだの。女として終わってるババアはいらないって。吉雄も、すっぴんとかお腹のたるみとか見てないからそんなこと言えるのよ」
吉雄「好きな相手と一緒に歳をとれる幸せがわからん奴に、何がわかるってんだ!! 朋子は一生、死ぬまでエロいぞ!!」
朋子「(間をおいて、泣きそうに)馬鹿ね」
SE:波の音フェイドアウト
――終劇
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