ユメミヅキ
登場人物(二人とも性別、名前は任意。台詞改変不可、ただし方言への改変のみ可)
A:育ちが良さそうで真面目
B:ツンデレ気味。冗談好きな雰囲気
〇本文
箸を置く音
A「ご馳走さまでした」
B「(得意そうに)ふふふ、ご馳走してやったよ」
A「
B「(得意そうに)そうだろうそうだろう。料亭の娘/息子なめんな」
A「なめてないって。この半年、何作ってもおいしくて、感動してるよ」
B「半年かあ……そういえば、Aがうちに来るようになって、半年なんだよなあ」
A「……(しんみりと)いつもご馳走になって本当にありがたかった」
B「前は、どんよりした顔で半額弁当ばっか買ってたよなあ、Aって」
A「うん」
B「隣人のよしみで肉じゃが分けてやったら、引くほど大喜びしてさ。懐かしいなあ」
A「うん、本当に感謝してるよ。お世話になりっぱなしで申し訳ない」
B「いいって。Aはよくケーキとかプリンとか買ってきてくれてたじゃん? けっこういいやつをさ」
A「いつもご飯に呼んでくれるからお礼に、と思って」
B「Aがそんなふうに律儀でいいやつだから、こうやって夕飯振る舞うようになったんだよ。今日持ってきたやつなんか、エリィのあまおうロールじゃん。数量限定なのになんで買えたんだよ」
A「運が良かったんだ」
B「ふーん、運ねえ」
A「うん」
B「だじゃれ?」
A「違うよ」
B「おもろないわー」
A「違うって」
B「じゃあそろそろ、食後のロールケーキ、出すぞー」
食器の音、お茶を淹れる音
B「牛乳入れる?」
A「(ため息をつきながら)……今日はストレートで」
B「了解。うおー、ふわっふわ! うんまそー!!」
A「(ため息)うん、おいしそうだね」
B「あ、なんかテンション低くない? 何か言いたいことでもあんの?」
A「その……この半年、楽しかったなって」
B「うん、楽しかった」
A「こんな時間がこれからもずっと続けばいいと思わない?」
B「そうも言ってらんないよ、もうすぐお互い引っ越しちまうんだから」
A「(間を置いて)……今の、付き合ってくれっていう意味で言ったつもりだけど」
B「(間を置いてから大声で)え?」
A「なんでそんなに驚くんだよ」
B「私/俺に惚れる要素あった? いつの間にそんなことになっちゃってんの?!」
A「たぶん、二回目にここでご飯食べてったあたりから」
B「なんで?! そんな大層なもん食わしてないけど?」
A「いやいやご謙遜を」
B「謙遜じゃなくてマジで」
A「とにかくさ……ちゃんと考えてくれない?」
三秒ほどの間
B「悪いけど、今、恋人募集とかしてないんだよね。4月から実家で五代目デビューだしさ、気合い入れたいんだよ」
A「知ってる」
B「Aとはさ、あと三日このまままったりしていたかったんだけど」
A「それも知ってた」
B「じゃあなんで、こんな最後になってそういうの壊すんだよ」
A「……(しんみりと)だってあと三日しかないって思ったらさ」
B「あーあ、これまでいい感じに過ごせて楽しかったのに、空気読めっつーの。なんか、変な感じになっちゃうじゃん」
A「……うん、ごめん」
B「まあ、聞かなかったことにしてやってもいいけど」
A「よくない」
B「はあ?」
A「(前のBの台詞に被せて)本当に、今の状態を壊してでも、言いたかったんだよ」
B「……(大きくため息)」
五秒ほどの間
A「(吹っ切るように、寂しそうに)じゃあ、帰るよ。おやすみ」
B「ケーキは? 食ってかないの?」
A「いらない」
B「えー?」
A「食べてく気分じゃないから」
立ち上がって廊下を歩き、玄関で靴を履く音
B「(ちょっとばつが悪そうに)ちょっと待った……あのさ」
A「ん?」
間
B「いつか、私/俺が一人前になったらうちの店に来てよ。遠くて悪いけど」
A「え?」
B「(真面目に)私/俺、五代目としてさ、うちの看板にも、親の顔にもに泥を塗りたくないんだ」
A「うん」
B「ちっこい店のくせにって笑うかもしれないけど、本気で頑張りたいと思ってるんだよ」
A「うん」
B「(徐々に尻すぼみに)板場に立って、少しはさまになったら……返事するっての、だめかな」
A「それっていつ」
B「いつかわかんないけど、できるだけ早く……胸張って会えるときが来たら、連絡する」
B「うん」
A「待ってるから」
B「(照れ気味に)そんなに先じゃない……と思うからさ」
A「うん」
間
B「んで、さ……(気恥ずかしそうに)ケーキ、食べてけば?」
A「うん」
--終劇。
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