兄貴イン・ザ・キッチン

  〇登場人物

     兄:メシウマDK。成明なるあきという親友がいる

     妹:気が強い。どメシマズ。

  〇以下、本文




   SE:家の中を歩く音


兄「何だよ、これ……くっさ! なんかありえない臭いがすんだけど」


妹「チョコパウンド。あさってバレンタインデーじゃん。パウンドケーキは少し寝かしたほうがおいしいっていうし」


兄「あ、俺、普通のブラックサンダーとかのがいい」


妹「誰が兄ちゃんにあげるって言ったよ。これは成明なるあきさんの」


兄「……え、成明ってあの成明?」


妹「(ドスを利かせて)悪い?」


兄「悪くはないけど」


  SE:冷蔵庫を開け、閉める音


妹「これで良し! あ、そろそろ塾行かなきゃ。兄ちゃん、言っとくけど、あのケーキ食べたら殺すからね」


兄「誰が食うか」


妹「触っても殺す」


兄「あんなの触らんって!!」


妹「その言葉、忘れんなよ。行ってきます」


   SE:玄関のドアを開け、閉まる音

 

兄「いかんいかんいかんいかん! あんなん食わしたら成明ふつうに死ぬわ! ただでさえあいつしょっちゅう腹壊してんのに」


  SE:しゅばっとかっこよくエプロンをつける音


兄「親友も、妹の面子も守るとしたら、こうするしかない!」


  SE:卵を泡だて器でかき混ぜる音、ハンドミキサーの音などを適当に入れ、最後にオーブンの焼き上がり通知音


兄「よし! クリソツ激うまチョコパウンド完成!」


  SE:冷蔵庫を開け、閉める音


兄「すり替え終了! さて、あいつが作ったこのダークマターは、申し訳ないけど、捨てるしかねーかな……あ、そうか、仏壇の奥に供えとこ。ご先祖様が喜ぶわ……多分」


  SE:チーンと仏壇のリンを鳴らす音。間をおいて、玄関ドアの開く音、閉じる音


妹「ただいま」


兄「お帰り」


妹「触んなかったでしょうね、あたしのケーキに」


兄「触るわけないだろうが」

 


  ――終劇。

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