モスバーガーの焼肉ライスバーガー

偉大なるアル中の王の帰還を目にした。

今宵は特別な食事が必要だ。

晩餐にふさわしいものを求め、緑の看板に吸い込まれた。


まずは、ウィスキーソーダを作る。

初めは処女の如く。

はやる気持ちを抑えて、サラダにドレッシングをかけまわし、一気呵成に頬張る。

にぎやかな響きが口腔を満たし、長閑な塩気が喜びを増大させる。

野太いポテトを頬張りつつウィスキーソーダを空け、次の試合に挑む。


新たなウィスキーのボトルを開ける。

氷もないジョッキに、三分の一のウィスキーを注ぐ。

ソーダを注ぎ九割を満たす。

本家には劣るとも、猛々しいハイボールを作り、芋の甘みを受け止める。

細身のフレンチフライもいいが、この重厚さは代えがたい。

そこに、オニオンリングの追撃が迫り、私の口腔は陥落する。

異なる甘味がジョッキの半分を空にさせる。


そこに、モスチキンが大挙して押し寄せる。

貴様の歓迎はその程度かと、塩気の裏に嘲笑を得る。


いい度胸だ。

私も全力で迎え撃とう。


氷もないジョッキに、二分の一のウィスキーを注ぐ。

ソーダを注ぎ九割を満たす。


さあ、開戦だ。

オニオンフライの半分と芋で聖杯の三分の一を空ける。

まだ、あの世界は理想郷だ。

私は安穏たる現世に在る。


緘封を解き、ライスバーガーと出会う。

レタスの香気が鼻腔を攻め立て、褐色の一杯を勧める。

浸食を続ける。


食んで、食んで、空けて、初めて至る地平がある。

牛肉の旨味と米の甘さ、そこにウィスキーソーダの多重奏が広がる。


英雄の帰還と幸福を与える食に感謝し、合掌する。

カラカラという音に誘われ、私は幸せな眠りに就いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る