ファストフードをまったり食す

吉野家の牛すき鍋膳

スーパー銭湯（せんとう）で体重（たいじゅう）が一（いち）キロ増（ふ）えていたことを知（し）り、適正体重（てきせいたいじゅう）から外（はず）れたことをかみしめる。

寂（さび）しさが胸（むね）を占（し）める中（なか）、今日（きょう）の晩酌（ばんしゃく）は決（き）まった。

暖色（だんしょく）の看板（かんばん）が心（こころ）を癒（いや）す。

容器（ようき）＆（アンド）包装（ほうそう）ダイエット宣言（せんげん）の袋（ふくろ）を横目（よこめ）に、慣（な）れた手順（てじゅん）でウィスキーソーダを作（つく）る。

前菜（ぜんさい）のポテトサラダは胡麻（ごま）ドレッシングでいただく。

贖罪（しょくざい）と罪（つみ）づくりを同時（どうじ）に行（おこな）う心地（ここち）よさに、酒（さけ）がたまらず進（すす）む。

そして、主役（しゅやく）の牛（ぎゅう）すき鍋（なべ）に至（いた）る。

まずは白菜（はくさい）をつまみ、ウィスキーソーダを呷（あお）る。

つぎに葱（ねぎ）をつまみ、ウィスキーソーダを嗜（たしな）む。

合間（あいま）に麺（めん）をつまみ、ウィスキーソーダを下（くだ）す。

さらに玉葱（たまねぎ）をつまみ、ウィスキーソーダを干（ほ）す。

加（くわ）えて豆腐（とうふ）をつまみ、ウィスキーソーダを作（つく）る。

そして、肉（にく）に至（いた）る。

禁忌（きんき）の味（あじ）。

神聖（しんせい）な味（あじ）。

一日（いちにち）の鬱屈（うっくつ）を晴（は）らし、一生（いっしょう）の血肉（ちにく）を得（え）る。

その感動（かんどう）は甘（あま）みとなって卵（たまご）より顔（かお）を出（だ）し、口腔（こうこう）を縦横無尽（じゅうおうむじん）に駆（か）け巡（めぐ）る。

ふと顔（かお）を出（だ）した人参（にんじん）が叱責（しっせき）するが、聞（き）く耳（みみ）持（も）たぬ。

さあ、酒（さけ）だ。

茶碗（ちゃわん）にどばどばと酒（さけ）を注（そそ）ぐ。

米（こめ）の甘（あま）い香（かお）りが鼻腔（びくう）を揺（ゆ）らす。

冷（ひ）やをくいっと飲（や）って、口（くち）を脂（あぶら）で満（み）たす。

もう、たまらない……。

今宵（こよい）はこのまま愉（たの）しもう。