9 宇宙を飛ぶ孤独な白い彗星

 宇宙を飛ぶ孤独な白い彗星


 ……ずっと、誰かを探しているような気がする。


 ……やっぱり、眠れない。

 しばらくして、眠ることを諦めた私が目を開けると、世界はやっぱり真っ暗なままだった。(目を閉じていても、開けていてもあんまり私の見ている風景は変わらなかった)

 私はしばらくの間、そのままぼんやりとなにもすることもなくて、そのまま宇宙の中に一人ぼっちで浮かんでいた。

 それからどれくらいの時間が経過したのだろう? (正確な時間はわからないけれど、結構長い時間がたった気がする)

 しばらくして、私はまた最初に小惑星を見ていたときと同じように、少し遠くにある宇宙を飛んでいる不思議な物体の姿を見つけた。

 ……あれは、なんだろう?

 そう思ってよく見てみると、……どうやら、それは『孤独な白い彗星』のようだった。(今度は、人工衛星ではなかった)

 私は宇宙を飛ぶ孤独な彗星の姿を見つめた。

 それは白い光の尾をひく大きな、……大きな彗星だった。

 それは、人工衛星が飛んでいった方向とは真逆の方向に向かって、宇宙の中を一定の速度で、ゆっくりと進んでいた。

 人工衛星が飛んできた方向と真逆ってことは、あっちには地球があるのかな? と、私は思った。詳しいことはわからないけれど、普通に考えれば、そちらの方向には人工衛星が宇宙に向かって打ち上げられた場所である地球があるはずだと私は思った。

 私は、宇宙を飛ぶ彗星の姿を見ながら、しばらくの間、考えた。

 そしてあるとき、本当にその瞬間、ふと私は、『地球に帰ろう』と思った。

 あの彗星についていけば、もしかしたら私は自分の故郷の星である地球に帰れるかもしれないと思ったのだ。

 真っ暗なままの、永遠の孤独が続いているような宇宙の中をむやみに動き回る気にはどうしてもなれなかったのだけど、あの白い彗星についていけばなんとかなると思った。

 あの白い彗星が、目印となって、私を地球のある場所まで導いてくれる、ような気がしたのだ。

 そんなことを考えていると、なんだかすごく力と勇気が湧いてきた。

 今すぐにでも地球に帰れるような気がしてきたのだ。

 真っ白な尾を引く彗星は、一定の速度で真っ暗な宇宙空間の中を飛んでいた。私は宇宙の中をゆっくりと泳ぎながら、そんな彗星のことを見失わないようにして、彗星のあとに向かって、進んでいた。

 それから、いろんなところを旅しながら、私はようやく目的の星を見つけた。

 そこには誰かが流した大きな涙の粒みたいな地球があった。

 私はずっと私の視界の中にあった真っ白な彗星に、ありがとう、さようならと言って、別れを告げて、(ちょっと悲しかった)それから地球に、ごめんなさい、ただいまと言って、私が遠くの宇宙から故郷の星に帰ってきたことを告げた。(真っ白な彗星は私にさようならも言わないままで、地球の横を通過して、それからまた宇宙の彼方に飛んで行ってしまった)

 ……私は、あなたのいる星に無事に帰ってくることができたのだ。

 そのことがすごく、本当にすごく嬉しかった。

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