10 ある日、君はいなくなった。

 ある日、君はいなくなった。


 早朝の時間。

 ……まだ、街が起きることを嫌がって、もう少しだけ、余計に眠っているような、本当に静かな時間だ。

 そんな時間に山根美鷹は目を覚ました。

 ……変な夢見ちゃったな。

 まだぼんやりとしている頭の中でそんなことを考えて、なんだかすごく恥ずかしい気持ちになった。(その見ていた夢の内容はすぐに忘れてしまったけど……)

 昨日は本当に嫌な日だった。

 一年のうちに一日か二日、あるかないかの最悪の日だった。

 私が本当の私の気持ちに気が付いてしまう日。

 私が本当の私自身と出会ってしまった日。

 そんな一日だった。

 美鷹は自分のベットの上から抜け出すと、そのまま自分の部屋を出て、階段を降りて、二階にある自分の部屋から一階にあるキッチンにまで移動をする。

 キッチンには誰もいない。

 そんな人気のないキッチンで美鷹は自分のためにコーヒーを淹れる。コーヒーが淹れ終わるまでの間、美鷹は椅子に座って、なにもせずにただ、ぼんやりとしている。

 なんの予定もない夏休みの一日。

 ……今日は久しぶりに近所を少し散歩してみようかな?

 美鷹はそんなことを考える。

 キッチンの窓からは眩しい朝の日差しが差し込んでいる。その光の中に、いつものように美鷹は親友の七海の姿を思い描いていた。

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