6
誰もいない無音の、真っ白な窓の開いた教室の中。
美鷹は一人ぼっちでそこにいた。
すぐ近くにある窓際の七海の席もからっぽだった。
そこには、ただの透明な空気だけが存在していた。
その事実を確認してから、美鷹は自分の机の上にうつ伏せになって、ゆっくりと目を閉じて、深い、……とても深い眠りの中へと、たった一人で落ちていった。(だって、七海がいないんだからしょうがないことなんだ)
美鷹はすぐに眠りについた。(授業中もよく居眠りをしてる美鷹は、本当にすぐに眠りにつくことができた)
その深い眠りの中で美鷹は一人、夢を見た。
幸せな夢か、そうじゃない夢なのかは、まだわからない。
そのひとりぼっちの夢の中で、美鷹は綺麗なピンク色の花が見渡す限りに大地の上に咲き乱れるとても不思議な場所に立っていた。
時折、とても優しい風の吹く場所。(きっと、度々感じたことのある、あの優しい風はこの場所から自分の暮らしている遠い街まで吹きてきたのだと美鷹は思った)
そんな場所に美鷹はひとりぼっちで立っていた。
そんな優しい風が、まるでそっと撫でるように、美鷹の長い黒髪をゆっくりと揺らしている。
服装はいつの間にか見慣れた白鳩高校の学校の制服から、真白なワンピースに変わっていた。頭には麦わら帽子をかぶっていて、足元は麦のサンダルだった。
そんな自分の服装に気がついて、美鷹はついおかしくて一人で笑い出してしまった。
私って、こんな趣味してたんだ。……幼いな。
もうわかってはいたことだけど、やっぱり自分でもおかしかった。私は大人になれていない。ううん。きっと一生、大人になんてなれないのかもしれない、と美鷹は思った。
たまごの殻が固すぎる。
こんな硬いもの、非力な私に一人で割れるわけないと思った。
こんこんと頭の中で空想のたまごの殻の中にいる美鷹は、自分を覆っているたまごの殻を手でドアをノックをするみたいにして叩いている。
向こう側から返事はない。
別に美鷹も誰かの返事を期待していたわけではないから、そのことを特別悲しいことだと美鷹は思ったりはしなかった。(その代わり美鷹は自分のために小さく笑った)
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