5 初めて、君と出会った日。

 初めて、君と出会った日。


 ……本当に、どうもありがとう。

 ……私と友達になってくれて。

 ……私とこうして出会ってくれて。


 純粋だったころの、あのころのなにも知らない(今もすごくたくさんのことを知っているわけじゃないけど)自分のことを、本当に強く、……深く、懐かしく思う。


 私は私。あなたはあなた。


 美鷹は初めて七海と出会った日のことを思い出してみる。

 その記憶は、七海との初めての思い出は、今になっても色褪せることなく、本当に鮮明な色とはっきりとした音を伴って思い出すことができた。(そのことが、すごく嬉しかった)

 二人が初めて出会ったのは、小学校の五年生のころで、美鷹と七海は二人とも十一歳になったばかりだった。

 二人の誕生日は同じ日で、二人とも四月一日生まれだった。

 七海は光の中にいた。(それはそれからずっと、今の今までそうだった)

 小学校の窓の開いた廊下から差し込んでいる春の太陽の眩しい光の中に七海は立っていた。そこからじっと、なにもない空中をとても真剣な眼差しで見つめていて(もしかしたら七海にはそこになにかが見えていたのかもしれないけど、美鷹にはなにも見えなかった)それから少しして、ふとそんな七海のことを廊下の隅っこからそっと盗み見ていた美鷹の存在に気がついて、美鷹を見た。

 二人の視線が重なると、七海はにっこりと優しい笑顔で美鷹に笑いかけてくれた。

 その七海の笑顔を見て、美鷹は一瞬で七海のことが大好きになった。

「ねえ、そんなところでなにしてるの?」

 七海は美鷹のすぐ目の前までやってきて、そんなすごく難しい質問を美鷹にしてきた。

「私にも、よくわからないんです。ただ、あなたの姿に見とれてしまって……、あっ」

 と(思わず自分の正直な気持ちを素直にそのままの言葉で)最後に自分の手のひらで自分の口元を思わず隠して美鷹は言った。(そんなことが自然と言葉にできて、自分でもすごくびっくりした)

「私に?」と自分の整った鼻先を長くて白い指で指差して七海は言う。

「はい。あなたに……」と顔を赤くしながら美鷹は言った。

 すると七海は「どうもありがとう」とにっこりと笑って美鷹に言った。(その七海の光の中にある眩しい笑顔を思い出して、十六歳になった美鷹はなんだかすごく泣きそうになった)

 それから二人は友達になった。

 ねえ、私たち、友達になろうよ、と最初に言ってくれたのは、やっぱり七海のほうだった。

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