第6話 精霊の村
俺はシルフとシルバーロードウルフの前にやってきた。
「さあ くそ狼、決着をつけようぜ。」
正彦とシルフは無事に契約を結んで再びシルバーロードウルフの目の前にたった。
『シルフ。用意はいいな。』
『大丈夫。「風采」』
すると刀の周りに風のオーラのようなものがまとわる。さらに足にも「風采」をかけてもらい、移動速度を上げる。
「さぁて 行くぞ。」
正彦は大きく飛び上がり、シルバーロードウルフの頭上から目の跡に手榴弾を投げ込む。
なんと奇跡的に手榴弾は目の跡にスッポリとはまる。そして爆発する。すると目の周りが吹き飛び、顔の3分の1弱が吹き飛ぶ。しかしまだ倒れない。それどころか飛びかかって来る。
「なんで顔消し飛んでんのに死なねえんだよ。ちくしょう!『アイスアロー!』」
避けながら傷口(傷口というにはエグすぎる。)に氷の矢を放つ。矢はほとんどシルバーロードウルフに刺さり血を流す。シルバーロードウルフは痛みに吠える。しかしまだ倒れず氷の槍や氷塊を飛ばして来る。
「まだくたばらねえのかよ。どんだけタフなんだ?まあいい。なら、これでしまいだ!」
正彦はもう一個の手榴弾を無傷の口の中に投げる。シルバーロードウルフは氷の大玉を放とうと口を開けていたため、見事に手榴弾はシルバーロードウルフの口の中に入り、爆発した。顔が破裂するようにバラバラに吹き飛ぶ。クラスメイトが見たら確実にゲロ吐くだろう。
「俺の勝ちだ。」
『勝った。私達の勝ち。』
『そうだな。俺達、だな。』
とりあえずシルバーロードウルフの無事な部位を収納する。顔は収納できなかった。
(さて。これからどうするかな。探索再開するか。シルフも連れてく、ってそうか!もしかしたら。)
『シルフ!お前の風の力で俺を上に持ち上げられないのか?』
『無理。地表までとか何メートル有ると思ってるの?』
『そっか〜。なら地表に戻る方法って分かるか?』
『私にはわからない。けど村の中の精霊なら知ってるかもしれない。』
『前に言ってた精霊の村ってやつか。ここから近いか?』
『うん。』
『なら精霊の村ってのに行ってみっか。案内して来れ。』
『わかった。こっち。』
俺はシルフの案内に従って右へ進む。岩山を超えて進むと小さな集落が見える。
『あそこが精霊の村。』
『なるほど。』
シルフを見ても小さいのに、まるで人が住む家のような大きさだ。人が数人入れる大きさで、どう見ても精霊が住むには無駄に大きい。正彦は秘水を飲みながらシルフに聞いた。
『なんであんなに家が大きいんだ?』
『私にもわからない。多分獲物を保管するためだと思う。精霊も精霊の村の結界内では妖精と同じように人型になる。』
『じゃあ飯も食うってことか?』
『正彦達人間が言う食事は必ずしも必要ではない。趣味で食べる精霊、妖精もいる。』
『ふーん』
などと念話しているうちに結界らしきものの前に着いた。
『なあ、このまま入っていいのか?』
『うん。大丈夫。』
結界を超えて村の前に着くと門番らしき人がこっちに気づいて聞いてきた。
「シルフ!戻って来たのか!怪我はないか?」
「大丈夫。危なかったけど。」
あれ?念話してないのにシルフの声が?と思い横を見る。
するとシルフが人型になっていた。これがシルフねえ。美人じゃん。
「ちょっと、正彦。今変なこと考えたでしょ。」
「考えてない。考えてない。」
「本当かなあ〜。まあ、いいけど。」
「ところでシルフ。その片腕の若者は何者なんだ?」
「私と契約した。」
「シルフ!?マジかよ。正気か?村長に伝える。」
「わかった。」
と言うと門番の精霊は村の内部に向かって走っていった。
「村長って誰だ?」
「大精霊クラウディア様」
誰かわかんねえ。まあ知る由もなかったからな。
するとさっきの門番が戻って来て、
「クラウディア様直々に会いたいそうだ。ついてこい。」
などと言うので仕方なくついていく。村の中を見渡すと、本当に人間が住む家で精霊や妖精たちには大きすぎる。やはり獲物の保管のためなのか。クラウディアの家は一回り大きかった。
「ここだ。よいか。口の聞き方に気をつけろ。決して無礼な真似はするなよ。」
何が無礼になるのか。まあどんなに念押しされてもいつも通りだけどな。
「クラウディア様、シルフと客人を連れてまいりました。」
「入れ。」
「はい」
「お前は門番の仕事に戻れ。シルフとご客人は入ってくれ。」
「はい・・・」
しれっと仕事サボろうとするなよ門番・・・
村長らしい家の中に入ると一回り大きい人型の精霊がいた。てか女性じゃん。なんで男口調?
「シルフ。ご苦労。何があった?」
「道中シルバーロードウルフに襲われた。」
「シルバーロードウルフですって!?至急村中に厳戒体制を敷きましょう。」
「待ってください。もう銀狼は倒しました。」
「シルフが?あなたがかなう敵では・・・ああ。そこでこの方ですか。」
「そう。契約して2人で倒した。」
「なるほど。それで、あなたは?」
といきなり俺を指差して来た。
「俺か?俺は氷室正彦。まあ普通の人間だ。」
「んん?ちょっと奥に来なさい。シルフもです。」
といきなり奥の部屋に向かっていった。
奥の部屋に入るとそこは占いでもするような部屋だった。中央の机の上には神秘的な水晶玉が置かれている。何をするのかとクラウディアを見ると
「正彦様はこの水晶の前に立ってください。」
どうやら俺のことを占うようだ。しかし
「俺は占いなんぞ信じていない。きな臭いにもほどがある。それにあんたを俺は信用してない。」
「いえ。別にあなたの未来を占う気はありません。ただ確かめたいことがあります。私のことを信じるかどうかはこの結果で見てください。」
「ハッ、だから信用ならないから結果も何もねえよ。」
「30秒もかかりません。それに今正彦様には魔力がないはず。急いでも仕方ないですよ。」
「まあいい。勝手にしてくれ。ただし、あまりに的外れな事言ったら叩きのめすぞ。」
「ええ。かまいません。やれるものなら。では見させていただきます。」
魔力をこめたのか水晶が光る。15秒ぐらい経つとその光は消え、クラウディアは驚いていた。
「あなたは・・・、この世界の人間ではないですね。召喚されたいわば異世界人というやつですね。」
「そうだ。」
この占いは信じていいのか。もしデタラメ言うにしてもこんなことは言わない。キチガイに思われる。
「あと魔力量が尋常じゃない。そして全魔法に適性がある。でも一番適性あるのは氷魔法。そしてエレメンタルマスターの資格がある。」
「全部当たりだ。だが最後のエレメンタルマスターってなんだ?」
「エレメンタルマスターは何体もの精霊と契約できるということです。でも今は能力不足で一体しかできません。」
「ふむ。さっきまでの言葉は謝る。他に何か見えるか?」
「異能の持ち主?能力コピーですか。」
「そうだ。正直使いあぐねてる。」
「一回しか使えないとなるとタイミングが重要ですね。確かどこかにスキル進化が出来る精霊の村があったような・・・」
「そんなところがあるのか!?どこだ?」
「わたしにもわかりません。ですがどこかの精霊の村であることは確かです。」
「分かった。自力でなんとかするよ。それで?ほかに何かあるか?」
「いえ。それでシルフ?貴方は正彦様について行くのですね?」
そういえば契約したとかなんとかで問題になって来たんだった。やべぇ忘れてた。
「もちろん。契約したし、ついていく。」
「分かりました。」
意外と理解がいいな。さすが村長だ。最悪この村長がクズだったら戦闘も考えてたが何もなくてよかった。
「なあクラウディア。こっちから1つ頼みがある。」
「なんでしょう?」
「しばらくここで家を貸して欲しい。地上へ戻る手段が見つかるまでの間、頼めないか?」
「そんなことお安い御用です。シルフの家でいいですか?」
「別に住めればどこでもいいさ。じゃあ世話になるぞ。」
よし。これで当分の住処ゲット。あとは食料の確保と地上への道だな。これは日をかけて集めていくしかなさそうだ。
「ここがわたしの家。」
俺たちは村長の家を出てシルフの家に来ていた。大きさはこの村の家々と同じくらいだ。人間も住めるので問題ない。
「ならここがしばらくの間拠点になるのか。まあいい。すぐに村の周りを探索するぞ。」
「分かった。」
俺たちは結局その日村の周りの地形を確認し、いくらかの果実を食べ、肉を食べて早めに寝た。長い間の野宿とシルバーロードウルフとの戦いで肉体的に疲労しており、すぐに寝付いてしまった。
翌朝果実をかじり、早速地上への道を探し始めた。午後になっても手がかりはなく、万事休すかとおもったが、1つ気になる洞窟を見つけた。光魔法を懐中電灯がわりに少し進んだが思ったより深いようだ。ここでいくつかの鉱物も採取できそうだ。早く日本に帰るためにはまず準備をしなければならない。どうせ家賃はタダだからいくらでもいられる。しっかり準備していこう。
そういえばシルフは精霊の姿に戻っている。謎だ。
「さてと今日はこんなもんだろ。鉱石も肉も果実もとった。帰るか。」
洞窟を出て村へ戻る。すると村の方にいつのまにか山のようなものが見える。
『シルフ、あんな山あったか?昨日はなかったよな?』
『うん。なんだろ?』
『少し待ってろ。千里眼で見てみる。』
なになに。うん?山が動いてるぞ。しかも村の方向に。あれは竜?図書館の厄災級モンスター一覧に確かあったな。土竜だったか。こいつが村に。って呑気にしてらんねえ。せっかくの家賃0の家を壊されてたまるか。
『なんだった?』
『土竜だ。あの伝説の厄災級モンスターだよ。』
『うそ・・・ うちの村で土竜と戦える精霊はいない。このままじゃ村が・・・』
『どうやら精霊たちは避難しているな。よし。』
「『物質創造』」
ここで銃を作る。ただ、銃といってもピストルだ。まだ他のは規制がかかっている。秘水を飲みながら考える。
(こっちの武器はピストルと村正と手榴弾3個か。ちょっと厳しいな。)
『正彦、まさか戦う気?』
『もちろんだ。俺の邪魔をする奴は人だろうがモンスターだろうが容赦しねえ。』
(どんなに相手が強くても下手に出たら負けだ。邪魔する奴は皆殺し。格上だろうが格下だろうか関係ない。俺は弱い。だからこそ全力で今を生きる。それだけだ。)
正彦は村へ向かって駆け出した。
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