第4話 変化と進化(?)

(痛たた・・・ 生きてる?のか?ここは?)


 目が覚めたとき正彦は鳥の巣のようなところで寝転がっていた。気がつくとともに全身に鈍い痛みが襲う。自身を励まして起き上がる。


(これからどうしよう?この崖は登れないし、どっかから脱出するしかない。幸いシルバーロードウルフはいない。救助が来る確率はほぼ0だし自分で動くしかない、か)


 千里眼で周りを見て脱出路を探す。どうやらここの周りには木がたくさんある。このおかげで軽傷で済んだらしい。うん?何か来ている。トリッキーな動きだな。猿のようだ。僕は木陰に隠れて様子を見る。しかしそれは無意味な動きだったらしい。猿はとっくに僕の存在を感知していたらしく、僕のことをあっという間に取り囲んだ。


(僕にこの猿達を全て倒す力はない。うまく一方を突破して錬成を使いつつ逃げるか?)


 しかしキーキーうるさかった猿達はいきなり道を開けた。そして「早く出て行け」というかのようによりいっそう騒ぎ立てる。僕としても戦いたくないので駆け出した。後ろの猿が一定の間合いをつけて迫る。そしてある程度進んだ時


「キキー!」


 猿達は一斉に僕に襲いかかった。急なことで錬成も出来ず、猿達に取り押さえられた。そして殴られ、引っかかれ、泥を投げつけられ、噛みつかれと踏んだり蹴ったりであった。


(ちくしょう。迂闊だった!狡猾な猿め。僕が何かしたのか。どうしてこうなった?内田が悪いのか?この世界に転移させたナントカとかいう神のせいか?追放を黙って見てたクラスメイトのせいか?中学の時の僕が悪いのか?)


 などと自問自答しているうちに状況はひどくなっていた。猿たちはのしかかり、引っ掻き攻撃をし続ける。正彦の皮膚はあっという間にボロボロにされた。


(いや。全て僕が悪い。内田に付け込まれるのも、こんなことになるのも全て僕が弱いからだ。もっと強くなれば異世界に行こうが裏切られようが関係ない!そのためには邪魔者は皆殺しだ!)


「・・・をするな」


 猿たちは本能的に危機を感じたのか、動揺しだす。


「俺の邪魔をするなあ!」


 正彦は氷の刺々しい壁を作り一気に全方位に押し出す。猿は浮き腰でいたため吹き飛ばされる。猿たちは今になって目の前の敵が危険なことに気付き逃げようとする。しかし


「誰が逃げていいと言った?猿ども。お前らはここで皆殺しだ! 『アイスアロー!』」


 正彦が許すはずがない。大量の矢を猿へ放つ。猿たちはバタバタと倒れる。後ろの猿は逃げてしまった。


「ハァ ちくしょう。」


 正彦は倒れこむように近くの岩に座り込んだ。


(猿は消えたか。しかしこれからどうすっかなあ。強くなるためにはレベルも上げるべきだし武器も持つべきだ。幸い鍛治スキルはあるから刀なら作れるか。いやできれば銃が欲しい。でもどうやって材料を揃える?今は刀で我慢するか。魔力はさっきほとんど使っちまったし猿の素材でも頂くか。)


 モン◯ンの剥ぎ取りをふと思い浮かべながら剥ぎ取りを始める。しかしなんの素材を取ればいいのかも分からず、手を止めると


[千里眼LV3が解放されました。アイテムボックスLVMAXが解放されました。物質鑑定LV5が解放されました]


アイテムボックス 謎の異空間に物を収納できる。アイテムポーチの拡大版。構造は謎に包まれている。LVMAXならば容量は無制限。ただし生きてるものや一定重量を超えるもの、一定の大きさを超えるものは収納不可。


物質鑑定 鉱物や植物の詳細、人工物の構成や用途が分かる。LVごとに分かるものが増える。


(どうやら千里眼は範囲が広がったようだ。アイテムボックスは本当にありがたい。俺にこんな能力があったとは・・・ まてよ物質鑑定があれば採取したものの詳細が分かる。ならアイテムボックスにしまい込めばいずれ色々なものを作れるかもしれない。それこそ銃や航空機などにも・・・

とりあえず猿の死体を収納しよう。)


「マジかよ。一瞬で消えちまった。超便利だな・・・」


(さてと。下手に動いても迷って碌な結果にならないことは中学の時に学んだ。それに魔力も少ないしな。今はこの周辺。いや千里眼で見れるところか。そこで何かしらの素材を集めて手頃な武器を作るとするか。鉄があれば刀がいいな)


 と思って周辺を探索する。しかし洞窟ではないので鉄なんて物はない。丈夫な木、あと魔結晶という魔力を一定量肩代わりしてくれる石を6個手に入れた。


(魔結晶か。こりゃいいな。しかし鉱石類を手に入れるには洞窟に行け、か。少し魔力も回復した。魔結晶もある。そろそろ動かないと飢え死にしちまう。いつまでも木の実生活ってわけにもいかないからな。)


 と思い正彦は少し暗くなった道を歩き出した。




「一体全体どうなってんだ。ここ。」


 正彦は密林をさまよっていた。崖の下に落ちたということは何処かから登るしかない。しかし下る道こそ一つあったが、登る道はない。


(ちくしょう。そう簡単にはいかないか。経験上いっそこういう時は下に行った方が近いかもな。)


 と思って坂を下っていくことにした。しかし坂を下っても密林は続き、歩き続けて疲れたと思い何処かに腰を下ろそうとしたその時


(これは獣道?こういうところに水があるな。いい加減喉が渇いた。行ってみるか。)


 と考えて獣道を進むこと約3分。綺麗な小さい泉に到着した。幸い獣や魔物はいない。ここで正彦は水を得ることに成功した。しかも


(この水普通の水じゃないのか?なんだ?物質鑑定でもわからないのか。毒ではなさそうだな。飲んでも問題なさそうだ。飲んでみるか。)


 とその謎の水を飲んだ。するとなんとさっきの猿たちから受けた傷が癒えていくではないか。さらに魔力も回復していく。


(これは回復効果があるのか。ならこの泉の水はたくさんもっていくか。さっきの木を使ってビンみたいなものを作って入れておこう。これは秘水と名付けておくか。)


 と少し離れた茂みに入り、ビンを作り始めた。


 そして二時間後。正彦はついにビンをたくさん作り泉の水ほとんどを回収した。すると


[能力知見LV3が解放されました。物質創造LV1が解放されました。]


能力知見 相手の能力、自分の能力、状態などが分かる。LVが上がるごとに詳しくなる。さらに敵の隠蔽スキルと相殺する。


物質創造 無から物を創り出す。ただし存在しないもの、理論上不可能なものは作れない。Lによって制限、消費魔力が減る。


(能力知見はありがたいな。敵のことを知ることは勝ちにつながる。物質創造とはチートな能力だな。でもL1じゃとてつもない魔力を使う。それに特別な鉱石類はほとんど今は制限されてる。でも刀ならつくれるかな。少し魔力をためれば一回ぐらいは使えるはずだ。まあいい。今は街に戻る道を探そう。)


 そして探索を再開した。しかし一時間ほど探しても手がかりはなかった。


(あーヤベェ腹減ってきたな。木の実でも食って飢えを凌ぐか?それとも一か八か魔物の肉を食うか?くそ。ここの知識がないせいでここまで困るとはな。寝るところはあそこの岩の裏でいいか。)


 そして木の実を食べ、寝ようとしたそのとき「ウォォォォォーン!」という何処かで聞いたような狼の遠吠えが聞こえた。


(シルバーロードウルフか?明日はあいつを仕留めてみるか。そういえば物質創造をやってなかったな。今からやってみるか。まずはやっぱり刀だな。日本刀に限るな。)


「物質創造!」


(さあ正宗か?童子切安綱か?雷切か?それとも三日月宗近?胴田貫?)

すると目の前にいきなり日本刀が現れた。

(これは・・・村正だと・・・?)


 そう。なんと日本の妖刀村正が現れたのだ。しかもこの村正は現役として使われていた時代の頃のものか、今の飾られてるような状態ではなく、鯖ひとつない素晴らしい状態だった。


(村正といえば"妖刀"で確か徳川家康の祖父 松平清康、父 広忠を切り、息子の信康切腹にも使われて家康本人も怪我をしたとかいう曰く付きか。)


「面白え。妖刀の凶運と俺の悪運どっちが強いかってか。凶運が強けりゃ俺は死ぬ。悪運が強けりゃ俺は生き残るか。徳川家康でさえも高いあぐねる"妖刀"、俺が使いこなして"名刀"にしてやるよ。」


(それにしても魔力消費が凄いな。一気に持ってかれちまった。1日一回が限度だな。次は手榴弾あたりが妥当かな?)


 などと考えつつ、村正をアイテムボックスに仕舞い眠りについた。




翌朝

 正彦は起き上がり朝から街に戻る道を探していた。幸い魔力は朝ほとんど回復したらしい。どうやら眠ると回復速度が速いようだ。


(さてと、シルバーロードウルフはどこにいる?近くにいる気がするんだよなあ。一応手榴弾を創るか。)


「物質創造!」


 すると手榴弾が6個現れた。正彦はそれを収納すると、秘水を飲み魔力を回復した。


(これで準備は整った。さあ狩りの時間だ。)


 そして今探索すること一時間半。ついに銀色の毛を見つける。シルバーロードウルフの毛だ。これを手がかりに追うこと15分、ついにシルバーロードウルフを見つけた。遠吠えを聞かなければ別の所に行く所だった。


(さてリベンジマッチだ!殺してやるよ!ん?)


 よく見るとシルバーロードウルフはボロボロだった。しかし今は捕食しようとしているようだ。しかし何を食べようとしているのかよく見えない。場所を移し千里眼で確認するとなんとか見えた。


(なんだ?獣でも、人でもない。まるで存在してるかわからないような生き物は?)


 ゲームのキラキラ光っている落し物のような感じだ。するとそのキラキラした謎の生き物はなんと隠れていた正彦に気づき、それどころか


『助けて・・・』


 といきなり正彦の頭の中に話しかけてきた。





江戸時代 徳川家

「殿!大変です!」

家老の某が急を告げにきた。

「なんだ朝っぱらから騒々しい。借金取りでもきたのか?追い返せ。」

「そんなことではありません!というか借金してたんですか・・・」

「そ、そんなことは今どうでも良い。では火事か?」

「違います。それで?いくら借金してるんですか?」

「ええい!しつこいのう!それで?一大事とはなんだ?」

「そ、そうです!実は家宝として厳重に保管していた妖刀村正が消えたんです!」

「な、何!何故それを早く言わん!急ぎ探させよ!将軍家にバレようものなら取り潰しだぞ!」

「は!」


アメリカ

「おい!ここにあった手榴弾はどこに行った!」

「あれ?たしかにここに6個あったはずなんだけどなあ?」

「職務怠慢だ!お前はクビだ!」

「そんな・・・」

「急ぎ上に報告せねば・・・ハァまた上からどやされる・・・」


などと徳川家某が取り潰しになったり、アメリカ人の1人がクビになり上官が上から叱られ、降格になったことは偶然だろうか?

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