第2話 冒険2日目
朝になると早速4人1組のパーティーが組まれ、行動することになった。これといったルールはなく、狩りが終わったら合流し、夜の見張りは当番制となった。なぜか僕の見張りが少し長い。しかも夜中から朝方ばかりだ。
そしてうちのパーティーには問題があった。
僕以外の3人 内田康太(男)、中原真紀(女)、野中春(女)は非常に仲が良い。この3人がイチャつくのを見るのが嫌な気持ちはわかるだろう?(ただ内田の返事は少し気がない返事が多いので多分ほかに好きな人がいるのだろう。)
それに日本では彼らにいじめを受けていたのでこっちでもいじめられるのかと思うと憂鬱である。でも1人ではやっていけないので、仕方なくついて行っている。これ以上団長の大友に迷惑はかけられない。早くレベル上げして離れたくても、成長率低下のせいで能力は伸びない。困ったものだ。そう思っていると内田が言い出した。
「みんな、聞いてくれ。このままではレベルが上がらないことについてだが、普通にここらの魔物が弱すぎるからだと思う。」
確かにここらの魔物はゴブリンやコボルトが中心で得られる経験値も少ない。
「ならぁ森の奥に入っちゃえばぁ。」
「そう。森の奥なら強い魔物もいるはずだ。でもその分俺らにも危険が生じる。だから一応みんなの意見を確認しておきたい。」
「私は構わないわよ。康くんが守ってくれればね。」
「私も」
「僕
「そうか。なら行こう。あくまで向こうのパーティーには秘密だぞ。」
「もち。」
僕はこのパーティーから除け者にされている。今のやりとりでわかっただろう。
それはともかく、森の奥に進む僕達。今日戦った魔物はジャングルキノコ、スモールトード、スライム、ゴブリン、ゴブリンソード、シャーマンぐらいだ。シャーマンはなかなか手強く、かなり苦戦してしまった。
夜になると2つのパーティーはまとまって成果報告をする。
「俺たちのグループは近くの森で戦っていた。レベルも少しずつ上がってきた。明日は街から近くの森の少し奥の方に行こうと思う。」
内田は悪びれもせず嘘を吐きまくっていた。
成果報告が終わるとこのパーティーの団長大友貴明が言った。
「明日次の街につけそうだ。街というよりは村に近い小さな街だ。この街には3日滞在する予定だ。あと次の街についてからパーティーメンバーに新しい人を加えてもいいことにする。そのかわり互いに連絡はちゃんと取ろう。以上だ」
「「「「「了解」」」」」
寝そべってうとうとしていると内田達3人は話していたが僕は気にせず眠った。
翌朝少し歩くと街に着いた。宿を取り、早速狩った魔物の素材を換金する。これでこのパーティーには銅貨34枚が手に入った。これを分けるとき内田は
「僕は12枚真紀と春は9枚。残りは君の分だ。」
と残りの銅貨4枚を渡して来た。これは差別だと言いたいが、言うと4枚の銅貨も取られかねないので黙って受け取る。宿代は3泊で銅貨2枚。自由に使えるのは銅貨2枚というわけである。
「今日も森の奥に行こうと思う。新メンバーはまだいらないだろう。」
「そうね。あの程度なら康くんと私達2人でも問題ないわよね。」
というわけで森の奥に行った。昨日と戦った魔物は同じで大したことなかった。シャーマンには相変わらず苦戦を強いられたが。
滞在2日目は違う森に入って魔物を狩った。相変わらずゴブリン、コボルト、スライムが中心で、たまにポイズントードやシャーマンがいるくらいなので銅貨の稼ぎは悪く冒険者にならないと割り引かれるせいで利益がない。
内田は冒険者登録をしようとしたが、みんなが「まだ目立つのは危ない」と説得し、冒険者登録はしていない。冒険者登録をしないと、報酬が割り引かれるのである。
そんな有様なのでポーションや杖を満足に買う金もなく金銭的には苦しいままである。
さらに内田達は剣についた血を拭いていなかったため、剣が錆びてしまい買い直しをする羽目になってしまう。
これ以上の出費は抑えたいという想いがあるからか、それ以降内田は焦りを抑えつつ魔法を中心として魔物を狩っていた。それゆえか動きが単調になりがちでぎこちなくなっており、避けられるような攻撃をくらい、軽傷を負うことが増えた。結果ポーション代がかさみ逆に赤字が増えた。
一方僕は機械的な作業のように魔物を狩っていた。あれから一度も王都で使ったアイスジャベリンは放っていない。詠唱に時間がかかりすぎるし、アイスボールで倒せるモンスターばかりだからだ。それゆえに怪我もなくやれている。
真紀と春は今までは内田のサポートに徹していたが、自分たちでも戦うようになっていた。
そして夕方にはシャーマン相手にも苦戦せずに倒せるようになり喜ぶ真紀と春。内田は愛想笑いを浮かべつつもどこかうまくいかないような顔つきであった。
夜
寝ようとする僕の前に内田は現れた。
「その、今まですまなかった。日本での学校のことでも、この二日間も差別やいじめをして悪かった。許してくれ。そしてこれからも一緒に戦ってくれ。」
と、いきなり謝ってきた。「え!こいつ誰!?」と言いたくなる身の変わりようである。なぜだろうか?しかし僕はこの時彼を許そうと思ったのだ。
「いや。いいよ。謝らなくても。これから平等にしてくれればいいから。」
「本当か!?助かる。ありがとう。」
内田はもう一度謝って真紀と春の方へ向かっていった。僕はこの時内田と仲良くできるのかなあなどと少し嬉しく思い呑気に寝てしまった。
僕が寝た少し後内田は独り言を言っていた。
ー明日は密林へ行く。俺と真紀と春では力不足かもしれない。あいつの機嫌を取れてよかった。利用させてもらうとしよう。あいつの氷の槍の威力は高い。魔力切れになったらあいつは用済み。帰りがけに密林に捨ててくか?いや、それはあとで考えよう。氷室正彦、お前は明日密林で1人死ぬ。これは俺の復讐だ。あの時の恨み明日晴らしてやるよ。そして許してやる。死という償いをおれに捧げたらなー
内田も明日に備えて寝た。
3日目になると内田は言った。
「今日は密林に行こうと思う。」
「危なくない?大丈夫?」
「康くんが守ってくれるよね?」
「もちろんだ。俺たちはシャーマンも苦戦しないで倒せるレベルまで強くなったはずだ。ならばさらに上のステップに挑もう!」
この話を僕はぼんやりと聞いていた。内田が焦っているのは理解できる。ただそこらの森と密林は大きな違いがある。
密林はダンジョンと似ていて、自分たちでマッピングをしなければならない。さらに視界も悪く、トラップがある。自然のダンジョンという呼び方がふさわしい。なのでレアアイテムも取ることはできるが、そこらの森とは魔物の強さが桁違いである。シャーマンなんて、密林ではかなり下級に位置する魔物であるからだ。シャーマンで苦戦するような僕達が密林に挑むのは自殺行為である。なおこの知識は初日の図書館で得た知識だ。内田はそれを知っているはず。
しかしその時内田は金を手に入れるために強い魔物を倒すしかないと考えており、密林の危険度が高いのはわかっていたが、奥深くに行かなければそこまで強い魔物は出てこないだろうとたかをくくっていたのである。
真紀と春は密林についての知識はない。しかも第一に内田の言うことに大体は賛成するのである。すると僕が意見しても(まず無視される)受け入れられることはない。なので聞いても仕方ない。
この間に僕のステータスは
氷室正彦 15歳 男
称号 転移者
天職 ???
レベル 11
体力 180
攻撃力 60
守備力 80
知力 150
魔力 1000
敏捷 100
魔法耐性 90
特殊能力 能力コピー ??? ??? ??? ??? ??? 千里眼LV2
スキル 言語理解 鍛治LV1 剣術LV1 氷魔法LV3
主な技 アイスシールド アイスボール アイスジャベリン
となっていた。本当に強くなったと言えるのか?やはり密林は無謀だよなあって思う。魔力の塊とも言えるこのステータスに僕は呆れてしまう。
「もっと他に割り振ってくれればいいのに」などと考えながら内田について密林へ行く僕にこれから訪れる厄災なぞ知るよしもなかった。そして内田の想いや陰謀もどきに気付くこともなかった。
その頃大友のグループは内田たちのやりとりも知らず近くの森で魔物と戦っていた。
後書き
パーティーメンバーのステータスです
内田康太 14歳 男
天職 戦士
レベル 10
体力 200
攻撃力 140
防御力 130
魔力 90
敏捷 100
魔法耐性 110
スキル 言語理解 剣術LV1 火魔法LV1 盾使いLV1
主な技 範囲障壁
中原真紀 14歳 女
天職 魔法使い
レベル 8
体力 100
攻撃力 70
防御力 60
魔力 120
魔法耐性 70
スキル 言語理解 火魔法LV1 水魔法LV1
主な技 ファイアボール アクアボール
野中春 15歳 女
天職 槍術士
レベル 7
体力 100
攻撃力 80
防御力 70
魔力 50
魔法耐性 70
スキル 言語理解 槍術LV1
主な技 なし
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます