追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

第29話 書記、召喚魔法とクラスをコピーする！？

　ううーん……？　

　召喚の獣からではなくて、どこからコピーが出来るのか。

　そもそも魔法のコピーは受けたらイメージが浮かんでいたし、受けるだけではコピー出来ないのか。

『エンジさん！　どうして反撃しないで受け続けているんですか！？』

　レシスの必死な声がずっと響いて来るが、反撃しようにも獣たち単体の技はそれぞれで異なるし、コピーのイメージが浮かんで来ない。

　そうなると召喚士たちに近づくしかないのに、近付こうとすると召喚された獣たちが、召喚士を守るようにして壁となる。

　幸いにして受け続けてもダメージを蓄積するわけじゃないからいいとして、持久戦となると、俺一人だけでは複数の召喚士を相手にするのはまだ厳しい。

『レシス！！　機巧ドールたちをここへ呼んでくれないか？』

『え？　あのドールさんたちですか？　わ、私では出来ないですよ。エンジさんなら、名を呼べばここに来るんじゃないでしょうか？』

　考えてみれば俺の心を見て名を与えて、ここに遷って来た彼女たちだ。

　それなら召喚ではないが、俺も名を呼んでここに集結してもらうとしよう。

『機巧のピエサ！！　えーと、この場に与する召喚獣に対し、我が身を救え！』

　半ば命令のようになってしまったけど、これで合っているのだろうか。

　召喚士たちが次々と呼び出す異形の獣たちの名は、最初に受けたティアマトしか聞こえなかった。

　普通にコピー出来ている魔法とは、もしかしたらコピーする難易度が違う可能性も否定出来ない。

　そうこうしているうちに、機巧ドールたちは立ちはだかる獣たちの正面で、壁となっていることに気付く。

『古代のアプレンティス、フェンダー……ティアマト、人間……詠唱――』

　え？　ど、そういう意味だろう。

　魔法は詠唱するもので、それが放たれて受けることでコピーして来た。

　召喚は召喚詠唱をしている本体、人間に触れてイメージをコピーする……？

　そうなると、使えないと言っていたレシスの固有スキルが有効となるが、確かイグザミン……だったか。

　まさかレシスからコピーした絶対防御の他に、必要となるスキルがあるとは思ってもみなかった。

　そう考えると勇者が彼女を仲間にしていたのも頷けるが、あの勇者はそこまで気付いていないだろう。

『君がいてくれて良かったよ、ありがとうレシス！』

『え？　プロポーズですか！？』

『……違うからね』

　勘違いをしたレシスから離れ、側面から召喚士たちに近づく。

　本体たちは、俺の姿と気配にまだ気付いていない。

　魔法や攻撃を受けるだけではなく、敵する相手に触れて詠唱イメージをコピーするのは、盲点だった。

　召喚魔法だけは特殊扱いなのか。

「な、何っ！？　い、いつの間にここに」

「――そういうことなので、あなたたちのその詠唱を貰います」

　召喚士たちは召喚した獣を俺に差し向け、本体は警戒を緩めていたせいか、俺が近付いたことに今気づいた感じだ。

　レシスに似た光の杖を装着し、本体は手かざしと詠唱で、異形の獣を呼び出しているみたいだ。

　そうして、”ティアマト”を呼び出している召喚士に近づき、イグザミンを使って詠唱する本体に触れてみた。

　召喚士　クラスC　専用召喚ティアマト　物理耐性E　魔法耐性C　精神力A　

　成長力C

　なるほど、召喚士それぞれの専用召喚なのか。

　コピー出来たのは専用召喚と召喚士のクラス、精神力といったところだ。

　だけど俺自身があの獣……ドラゴンを召喚出来るのかは、イメージに浮かんで来ていない。

　もしかすれば召喚士本体（オリジナル）のクラスが関係しているかもしれないが、これも俺の成長次第か。

「くっ、いい加減離れろっ！　うあっ！？　な、何だ……お前、その防御力は――！？」

　名も知らない召喚士の男は、触れていた俺を払いのけようとしたが、見えない何かに弾き返されていた。

　恐らく、絶対防御が常時発動しているおかげだろう。

「うっ？　あ……すみません。もうここから離れますんで、それと勇者を信じて俺に攻撃をすれば、どうなるかは分かったはずです」

　脅すつもりも無ければ、召喚士たちを懲らしめるつもりも無かったが、言葉をそのまま受け取ってくれたらしく、引き上げてくれるらしい。

『……っ！　た、退却する！！　各々、獣を帰還させるんだ！』

　クラスこそ高くは無かったが、彼の声を受けて召喚士たちは詠唱をやめて、この場から離れて行った。

　事態に気付かず高みの見物をしている勇者は、獣好き賢者と共にルオのいる森に行ったらしい。

「アプレンティス、撤収でヨロシイ？」

「え、あ……そ、それでいいよ」

「ショウチ。ショウカンヲガクシュウ！」

「へ？」

　言葉も学習したのか、機巧ドールのピエサは言葉を話し出していた。

「フェンダーは、アプレンティス……見習いだから。マスターになるまでは、ドールたちを学習させる」

「あ、見習いって意味なんだ。そ、そうか」

「あなたがドラゴンを呼べなくても、ドールたちが呼べるようになったから、ここの守りはさらに強くなる」

「そ、それじゃあ、やっぱり俺は召喚魔法のクラスを上げないと？」

「そう」

「ま、まぁ、ここが守られるならいいかな……」

「編集可能になるには、クラスを上げる。編集して、獣から受けた攻撃を魔法に変えるべき」

　召喚魔法は機巧ドール向けというか、介するものということらしい。

　もしかして他にも特殊な覚え方があったりするんだろうか。

　何にしてもまずは、召喚士たちを撤退させたので良しとして、しつこすぎる勇者を何とかしよう。