第28話 書記、召喚攻撃を浴び、悩みまくる
◇◇
「本当だな? 本当にここに獣族たちが閉じ込められているというのだな?」
「くどいぞ、それでも賢者なのか、アースキン。そうでなければ、こんな山を攻めろというクエストが出るわけないだろう?」
「何者か知らないが、獣族を蹂躙するのは許してはおけないからな。ラフナンは獣を可愛がっているか?」
「……もちろんだ」
エンジとの勝負に負けた賢者アースキンは潔く言われたことをすぐに実行し、勇者を説く為ログナにいた。
しかし口上手の勇者により、エンジのいない隙を狙って嘘を吹き込み、賢者に従う召喚士、獣使いなどを伴って一斉攻撃を仕掛けることに協力していた。
「……あそこに見えるのはどう見ても白狼……フェンリルなのでは?」
「ここにいる奴は幻覚を見せるのが得意だ。フェンリルだろうが何だろうが、全てまやかしだと思ってくれ」
「それで、山の支配者は何という者か?」
「書記だ」
「何? 書記……? それはもしや――」
「しっ……! 奴だ。俺たちの仲間だった回復士の彼女を人質にしているぞ。奴を狙い撃ちだ!」
◇◇
レシスは光の杖であるセイアッドスタッフを手にしている限り、如何なる攻撃も無効にする。
俺だけに降り注いでいる魔法、火矢、氷矢などなどは、レシスに当たることは無い。
今回は余程の腕利きたちを揃えて来たということのようだ。
範囲外とはいえルオならばこの状況に気付いているかもしれないが、彼女には猛獣に対してもらう。
今回指示を出しているのは切れ者なのか、物理と魔法を同時に繰り出している。
魔法に関してはコピーすると同時に耐性が出来るが、受けたことのない物理攻撃は、絶対防御を張る前に受ける必要がある。
だからといって傷を負うわけではないが、一度は受けないとパラメータも更新されないことが分かった。
「……ん?」
『不届きなる占領者め! 漆黒よりの使者であるティアマトにより裁かれるがいい!!』
これは魔法……?
禍々しい鱗で覆われたドラゴンのようにも見える。
これは召喚というやつなのか。
複数の術者によって異界から呼び出したとすれば、これはコピー出来るか怪しいところ。
『書記のエンジ! 賢者の声かけで、本物の召喚士を連れて来てやったぞ! ざまーみろ!! 召喚された獣は、その辺にいる獣とは格が違い過ぎるぞ。いつものように、まやかしでかわしてみろ!』
賢者の声かけということは、ここにあの獣好きな賢者が来ているのか。
それにしても俺一人の為だけに、賢者の協力で召喚士を仰ぐとは、どれだけ必死なんだ。
『
「わっ!?」
勇者のことを呆れていたら、召喚士たちは次々と召喚で異形の獣たちを、この地に呼び出し続けているみたいだ。
あれも魔法なのだとしたら、コピーしたいけど、召喚された獣から攻撃を受けたらコピー出来るのだろうか。
そうこうしているうちに、最初に召喚されたティアマトと呼ばれる漆黒のドラゴンから、周辺の外気を一変させる息がこっちに向かって、吐き出されようとしている。
『エンジさんっ!! 駄目っ、逃げてくださいっ!』
「レシス?」
セイアッドスタッフによる絶対防御によって、あらゆる攻撃から身を守られているレシスから、俺に向かって声を張り上げられていることに気付く。
直後、ドラゴンからのブレスを思いきり浴びてしまったらしい。
召喚獣 ティアマト ドラゴンブレス 灼熱耐性 腐食耐性 氷の息吹
石化を付加
あれ? コピーが出来ていない。
ダメージこそ受けていないが、イメージが浮かんで来ただけでコピー出来ていないみたいだ。
もしかして召喚獣からの攻撃ではコピー出来ないのか。
「フェンダーは、段階的にコピーをする」
「……ま、また君は知らない間にいるんだもんなぁ」
「召喚魔法のコピーは、獣の攻撃からじゃない。分かった?」
「それはいま分かったけど、召喚士から……?」
「それも少し違う。あなたが魔法をコピーする時は、どうやってコピーをする?」
「え、えーと……」
「分かるまで、獣の攻撃を受け続けるしかないから」
「お、教えてくれないんだね」
フェアリーは少しいたずら好きで意地悪な妖精と聞くけど、ザーリンは分かっていることを教えてはくれない。
これは今まで簡単にして来た魔法のコピーとは、違うのだろうか。
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