2-5

 ――薄暗い屋内で、男はただ静かに佇んでいた。狭くはないが、そう広くもない。この場所に意味はなかった。彼の目的は、ただ一つ。

 とそこで、その静寂を破る声が響いた。唯一の入り口である鉄扉を開けて入ってきたのは若い男。


「リーダー、お喜びを! 奴がいました! 公安署から出てきたところを現在尾行中です!」

「……そうか」


 連絡役である彼のその報告に、男は笑みを浮かべる。


「ですが、妙なやつらが同行しているようで――」

「かまわない、動け」


 冷徹な声で男は告げる。連絡役の彼はその声に本気を感じたようで、ぴっと身を引き締めた。


「では、予定通り実行に移します!」


 そして連絡役は再び外へ向かう。

 後に残った男はぎらついた目で、部屋の闇を見据えた。


「やっとだ……やっとこの手で……」

 そして妙に芝居がかった笑い声が、部屋の中に響き渡った。

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