第215章 小心者の距離感

 今はもう会えないから。

 その距離まで遠く離れてしまうとは限りません。

 むしろ、近づいてしまう。

 そんな『小心者の距離感』もあるようです。






肯定

 好きだった誰かが。

 ほんの少しだけ遠くへ行ってしまった。


 一言も言えずに、そのまま。

 もう、それきり。

 二度と戻らない。


 そんな瞬間に出会うことも多々あるけど。

 意外にも小心者の僕は、あの時、こうしておけば。

 勇気を振り絞って、言っておけば。


 そう思う、気持ち。

 それに出会ったことを覚えていない。

 もしかしたら、遠い昔に出会ったのかもしれないけど。

 

 最近は全く出会っていない。



テツガクちゃん

 それは、最高じゃないですか。

 できることなら、出会わない方がいい気持ちです。


 あの時、ああしておけば、こうしておけば……。

 そんな、しみったれた空気では炎も燃えません。


 永遠に燃える、その炎さえあれば。

 他には何も。


 肯定さんの奥の方にも。

 そういう、今も確かに燃え続ける。

 そんな炎がありますよね?



肯定

 あるけど、よくこの炎に気づいたね。

 さすが、ガクちゃん。


 僕の誰かに対する炎は、消えることのないもの。

 むしろ、その別れから静かに確かに燃え続ける。

 僕は成功などしない、スロースターター。


 そんな小心者だよ。



テツガクちゃん

 小心者、最高ですね!

 小さいけど、確かに燃え続ける、静かな炎がある。

 そんな凄いやつです。


 一歩が踏み出せず、何も言えないこと。

 それは、自分でもよくわかっている、当たり前。


 それを嘆くよりも、自分にできること。

 それに、肯定さんも出会ってしまった。

 そんな今が、あるのではないのですか?



肯定

 霧の名探偵もビックリな視点だね。

 まあ、それも当たり前に然りな当然か。


 そう、今の僕にはそんな今がある。

 不思議だけど、憧れの誰かとの距離感。

 それが限りなく近づいたように感じる、今が。


 きっと、錯覚なんだろうけど。

 その幻の中でも、確かに燃え続ける、確かな温度。


 それを感じるのだから。

 この距離感に愛おしさを感じたり。



テツガクちゃん

 ステーキな距離感ですね!

 もし、名前をつけるのだとしたら。

 それは、『小心者の距離感』という名の現象ですね。


 今、会いにいけて、何かを伝えられるのなら。

 それに越したことはないのでしょう。


 ですが、会えなくなってしまったから。

 その距離感まで遠くなってしまう、とは限りません。

 

 むしろ、近づいてしまう。

 摩訶不思議な錯覚の距離感。

 それも確かにあるようです。


 生きているうちに、できることはやってしまう。

 そんな『グリセリン・クイーン』の隣には。

 ほんの少しだけ遠い場所へ行ってしまった。

 もう一人のクイーンがいるのかもしれません。

 

 もう会えないけど、まるで隣にいるような。

 その距離感で、毎秒伝説を描く。


 あなたはどうでしょうか?

 もう、会えなくても。

 距離感までもが遠ざかるとは限りません。

 むしろ、縮まってしまう。

 そんな摩訶不思議な風と光が見えたら。

 迷わず、DIVE IN !です。

 Stayしがちな何かを染めて。


 ほら、歌う不死蝶さんがゴキゲンに歌っていますよ。




  

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それでは、また次の機会にお会いしましょう。

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