第21話 プロポーズ~初めてのオーガズム

 香緒莉は今日から冬休み、朝、いつものパンツ丸見えの制服姿が見られないのが少し残念だ。


 今日は12月24日 香緒莉にプロポーズを決行すると決めていた日だ。


 朝の出がけの会話だ。


「香緒莉、今日の夕食は用意しなくていいよ」

「レストラン予約してあるから、今日は外で食べよう」

「仕事終わったら迎えに戻るから」


「えっ、本当、凄く嬉しい」

「どこに行くの?」


「それは後のお楽しみと言う事で」

「それと、ケーキも用意しなくていいから」


「わーい、楽しみ」


「それじゃ、行ってきます」と言って出社する為、玄関の方へ行くと、


「あっ、忘れ物」と言って〈行ってきますKiss〉を強請ねだられた。


 通学時は一緒に家を出るので夏休み以来の、出掛けのキスだった。




 会社に着くと駐車場の隅に有る喫煙所で誰かが煙草を吹かしていた。

 近くに寄ってみると峰岸麻衣だった。


 ――んー?いつもは遅刻寸前の麻衣が何故この時間に――


「おはよう!峰岸さん、今日は随分早いね」


「おはようございます!先輩を待っていました」


「何か用?」


「結城先輩の今日の夜の予定とか一寸気になってね」


「俺の予定が君に関係あるの?」


「もし空いているならと?」


「すまん、先約がある」


「あーやっぱり本当なんだ」


「何が?」


「先輩って今、同棲しているんでしょ?」


「誰から聞いたか想像できるけど、間違いないよ」


「分かりました。お幸せに」



 そんな麻衣の朝の質問に少し戸惑いながらも仕事に就く。

 少し離れた場所で麻衣と城所が話をしている様に見えた。

 仕事の話では無いと思ったが、気にしない様にした。


 長く感じられた勤務時間であったが就業終了の時間を迎えた。

 俺は帰宅の準備を初め、パソコンの電源を落とし、机の整理をしていると、城所と麻衣が傍に来て色々と冷やかされたが、それに構わずさっさと会社を後にした。


 さすがに今日はイヴだ。

 彼氏彼女がいる奴ばかりでなく、いつも残業している家庭持ちも定時で帰る風景が見られた。




 家に着くと、綺麗に化粧して可愛いワンピースを着た香緒莉が、いつもの〈おかえりキス〉で迎えてくれた。

 おかえりのキスは、お盆帰省から帰ってから毎日の儀式だった。



「香緒莉、さあ行くよ」

「はーい、一寸待って」と言ってプレゼントらしい紙袋を持って俺の後から付いて来た。


 再び車を動かし、今走ってきた道を街の方へ戻る。


 地元では割と名の知れたホテルの駐車場に車を入れて、予約していたそのホテルのレストランに向かった。


「メリークリスマス」と二人で輪唱気味の乾杯をして、割と豪華な晩餐を楽しんだ。

 俺はワイン、香緒莉は定番のアップルジュースだった。


 毎朝のアップルジュースの効能なのかは分からないけど、出会った頃より香緒莉のバストは普通から準巨乳くらいまで発達した様だ。

 直に触る俺が言っているのだから間違いない。


 香緒莉は食べるよりも次々と出てくる料理の写メに夢中だ。


 ――やっぱりJKだ――


 それと、車なのにワインを美味そうに飲んでいる俺を見て不思議そうな顔で聞いてくる。


「アルコール飲んで、運転大丈夫?」


「大丈夫だよ!本日愛車はお泊まりです」


「ああそうなんだ、じゃあタクシーで帰るの?」


「まあそうかな」と、はぐらかす俺



 香緒莉はクリスマスプレゼントと言ってネクタイをくれた。

 出会ってから初めての香緒莉からのプレゼントは嬉しかった。


「ありがとう香緒莉。凄く嬉しい」と返事した。


「すまん香緒莉、用意したプレゼント、車の中に忘れて来た、後でいいかな?」

 と嘘を言ってその場をしのいだ。


 レストランでのクリスマス会も終わり、ホテルのフロント近くまで来た。


「香緒莉、実は部屋を取ってある。今日は此処に泊まろう」


 香緒莉は少し驚いていたが、その顔が笑顔に変わるのに一秒もあれば十分だった。


「プレゼントは、後で車に取りに行くから、先に部屋へ行こう」

と言ってフロントで予約していたケーキとルームキーを受け取り、エレベーターで最上階まで上がった。


 いわゆる、セミスィートの部類に入るその部屋に香緒莉はテンションが又一段上がった様だ。


 窓から見える冬の夜景が素晴らしく美しかった。

 暫く身体を寄せて、ふたりはその景色に見とれていた。


 俺はその場に香緒莉を残し、通勤バッグからひとつの小さなケースともうひとつの包みを取り出して又香緒莉の元へ戻った。





 そして香緒莉にプロポーズをした。


 ダイヤの指輪の入ったケースを開けて、それを差し出しながら、


「比内香緒莉さん、私結城漣と結婚してください」

「一生大事にします」

「そして一緒に幸せになろう」


 普通の言葉だったが、気持ちを込めて伝えた。




 夜景に見とれていた、香緒莉の顔がみるみる崩れていった。


「れーん、れーん」と言って抱きついて来た。


 そして抱きついたまま

「ありがとう漣、凄く嬉しいです」と言って又泣き出してしまった。

 予想通りの習性が暫くぶりに繰り広げられた。



 習性が終わると、

「わー、ぴったり」

 と言って、俺が左手薬指に刺してやったエンゲージリングをずっと見ている。


「私の指のサイズ、何故わかったの?」


「実は、香緒莉が寝ているときこっそり測った」


「それとこれ、クリスマスプレゼント」

 と言って誕生石ペリドットのちりばめたネックレスの入った包みを渡した。


「これ、誕生石のネックレスだから、普段エンゲージリングの代わりに着けても良いよ」

「けど、学校は無理かもね」



 更に続けて、

「香緒莉が高校卒業したら籍を入れようと思っているけど、それでいい?」


「はい、よろしくお願いします」


「こちらこそ、バツイチですがそよろしくお願いします」


 永遠の契りを交わしたふたりは、いつもとは違う雰囲気の部屋で、お互い生まれたままの姿で、いつもとは違う愛情を交わした。


 その時間はいつもとは違い、気がつけば、窓辺の美しい夜景が覚める時間まで続けられた。


 そして香緒莉は、声を出しながらの初めての絶頂を何回も味わう事ができた。






 その時二人は、これからの幸せな生活が、永遠に続くと信じて、疑う余地など全く無かった。


 ――その時は――

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