第9話 調査
蓮は外へ出て1階のシャッターを開ける、
「目的地まではこのバイクで向かう。後ろに乗れ。」
「バイクなんですか?」
「小回りが利くからな。それに、基本外は舗装されてない道も多いからこれが便利なんだよ。」
「なるほど、分かりました。」
六華は後ろに乗り取っ手を掴む。
「よし、では行くか」
バイクを走らせおよそ30分。目的地付近へ到着し、バイクを降りた六華が感想をもらした。
「それにしても静かで乗り心地のいいバイクですね。お尻も全然痛くならなかったです。」
「ああ、これは昔軍の技術者に作らせた特注品だ。エンジンからシートまで最高級品で仕上げてある。」
「道理で。」
「さぁ、無駄話をやめて調査に向かうぞ。」
「はい。」
「まずは、憎魔及び軍の先遣部隊の死体があるか探すぞ。」
「軍の方々は行方不明では?」
六華はまだ死んでないのでは?と思い質問するが、
「同じさ、もう1週間も連絡が取れなくなっている。死体捜索と変わらん。それにこの手の捜索は希望を持つと裏切られると相場が決まっている。」
そう言われ六華は黙り込んだ。そんな様子を蓮は一瞥する。
「……ほら、行くぞ」
六華は黙って蓮に付いていく。
「どうやって探していくんですか?」
しばらく歩くと六華がそう質問してきた。
「まずは、憎魔の死体があった場所、それと先遣隊の連絡が途絶えた場所に向かう。なにかしら痕跡が残っている可能性が高い。」
「分かりました。」
「言うまでもないと思うが、いつでも臨戦態勢を取れるように警戒しておけ。」
六華は頷き、緊張を高めていく。
蓮が急に立ち止まった。
「ここだ。調査にあたっていた者と連絡が途絶えた場所だ。なにか痕跡がないか探すぞ。」
2人が手分けして付近を捜索すると、六華は人間のものと思われる血痕を見つけた。
「蓮さん。ここに血の跡があります。」
蓮は血の跡に近づき周りを見渡す。
「遺体が近くに無いということは、どこかに移動したか…血痕は裏路地に続いているな。この跡を追うが、この先は建物で死角が多くなる。敵の不意打ちを警戒しておけ。」
「はい。」
六華は短剣を抜き、いつでも迎撃できるようにして進んでいく。
「このビルか。」
血痕を辿って2人は廃ビルの前に着いた。
「入るぞ、付いて来い。」
元はホテルだったのか、大きなエントランスに出る。廃墟マニアが見たら喜びそうな景観をしている。
「蓮さん!あそこ!」
六華が指差した先に、1人の男性が壁にもたれ掛かっていた。六華は小走りで近づいていく。
「おい六華待て!」
蓮がそう叫んだその時、横から小さな犬のような憎魔が飛び出した。六華は完全に油断しており、反応が遅れる。憎魔が頭を噛み砕こうと飛び掛かる。六華は死を感じたが…
ズドンッ!!憎魔が地面に叩きつけられた。
クロユリを展開し駆け寄った蓮が頭に剣を突き立てトドメを刺す。
「勝手に先走るな、俺がいなかったらお前死んでたぞ。」
怒鳴るでもなく淡々と怒られた六華は俯き、涙目になりながら謝った。
「申し訳ありません…」
「俺と居たことで気が緩んだか。1人で旅路をしていたんだろ。ならこんな醜態は本来晒さないハズだ。二度目はないぞ。」
「はい…肝に銘じます。」
「それに、あの男をよく見ろ。既に死んでいる。」
六華も薄々気づいていた。床におびただしい量の血痕があったのだ。しかし、もしかしたらまだ生きているかもと先走ってしまった。その結果がこれだ。ただ蓮のように中々割り切って動けない自分もいる。その葛藤に苛まれる。
その様子を感じ取ったのか、蓮はフォローを入れる。
「はぁ、だがしかしお前は本来優しい性格なのだろう。それを捨てろと言わん。だがそれで死んでしまっては元も子もない。」
俯く六花の頭を手でポンッポンッと優しく叩く。彼なりの優しさだろうか。
「いつまでもこうしてはおれん。他の奴らに気付かれる前に手がかりを探すぞ。」
そう言われ、六華は目に溜まった涙を拭き取り顔を引き締める。
死んだしまったとはいえ、腐っても軍人だ。蓮は何かしら手がかりを残している筈だと思い。持ち物を物色する。
すると、急いで書きなぐったようなメモ用紙が見つかった。蓮はメモ用紙を広げる。
『俺はカルマ隊の
最後の力を使って書いたのだろう。字からもその無念が伝わってきそうな文だった。
「なんと書いてあったのですか?」
六華が質問してくる。
「仲間は全員殺されたと書いてある。命からがら逃げたのだろうな。あと、キメラ型の憎魔で毒を使うらしい。複数人のカルマがLv3ならともかくLv2に一方的に殺されることはあまりない。よほど狡猾な奴なのかもな。不意打ちや罠を使った可能性もある。」
「そう、、ですか。全員亡くなったのですね。」
「怖いか?」
「はい、正直に言えば。ですが、ここで逃げる事などできません。」
蓮は六華の眼を見る。覚悟の決まったいい眼だ。しかし、先日見た憎しみが奥に覗く暗い眼でもある。
「なら良い。憎魔を討ちにいくぞ。」
2人は、憎魔を討つべく歩き出した。
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