第10話 戦闘

 阿修羅王がたった今、目の前で切られたサチと、バラバラに切り殺されているリノの死体をジーっと見ている。 

 阿修羅王の周りの何千何万もの兵は、阿修羅王の顔色を見ているようだ。

「やはり鬼神を操る事は出来ぬのか……」

 貴史は阿修羅王が何を言ってるのか理解出来ないようだが、まだまったく怒りを抑えきれず、阿修羅王に斬りかかった。 

 阿修羅王もすかさず槍を手に取り応戦する。 

 ガギッ‼︎ 激しい剣と剣の衝突する金属音が鳴り響く。

「憎い……憎い……」

 貴史はもはや人とはいえぬ形相で、まさに鬼神と呼ぶに相応しい形相で、阿修羅王を睨みつけている。 

 阿修羅王の周りの修羅達は貴史の殺気に威嚇され、身動きが出来ないようだ。

 阿修羅王が大きな声で叫んだ。

「全兵よ‼︎よく聞け‼︎ ここからは我と貴史の勝負。手出し無用‼︎」

「がー」

 貴史は空中へと舞い上がり、阿修羅王の頭上から剣を一気に振り下ろそうとしている。 

 阿修羅王は槍を構え、地上で応戦態勢だ。 

 激しい、かなり激しい戦闘になってきている。 その戦いは三日三晩続いた。

「ハァハァハァ」

「ゼェゼェゼェ」

 二人とも体力の限界が近い。

「殺してやるー‼︎」

 貴史は叫びながら、剣を阿修羅王目掛けて放り投げた。

「うらー‼︎」

 阿修羅王は雄叫びをあげ、貴史目掛け、槍を放り投げた。

 二人とも避ける体力も残っていない。相打ちかと思ったその時。 眩い光と共に、貴史の剣と阿修羅王の槍が消え、貴史はその光に吸い込まれ消えてしまった。

「チッ、神の仕業だな」

 阿修羅王は不満気な顔をしている。

「全兵よ、撤退だ‼︎ 」

 阿修羅王と修羅達は、城へと戻って行った。


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