第9話 再会

 穴を通過し、その異変にはすぐに気付いた。

 どういう訳か、静まりかえっている。 

 とりあえず、阿修羅王に会いに行かなくてはと貴史は思い、阿修羅王の宮殿を目指し、歩いていると、なにやら少し先に人影が、あれはもしかして、サチ‼︎ 

 貴史はサチの元へも走った。

「サチ、無事だったのか?」

 なぜだかサチな怒っているような表情だ。

「貴史か…… なぜ、戻れた?」

 畜生界で別れたサチとは明らかに雰囲気が違う。 

 そして貴史は周りをよく見回してみた……

「これは……」

 自分を修羅にしたリノの体がバラバラになり転がっている

「リノは私が始末した。そしてお前には、地獄界で黒鬼王に殺されてもらう予定だった。 なのに、なぜ生きている? しかもその姿、本当に修羅になったのか?」

 サチは鬼神の事を知らないのか、首を傾げ貴史を見ている。

 貴史はなぜだか体が熱く、憎しみのようなものが湧き上がってくる。

「熱い……体が熱い……そして憎い……」

「何を言っている?」

 貴史は剣を抜き、サチに向け構え、さらには蒼白い修羅の剣が黒く変色していく。 

 一瞬の出来事。 

 貴史の剣はサチの右肩を貫き、後ろの岩の壁まで突き刺さっている。

「痛い‼︎」

 サチは大きな声で叫んだ。

「誰かーーーーー‼︎」

「反乱だーーーーー‼︎」

 少し離れた場所から砂埃が舞い、修羅の群れがこちらに向かってきている。 

 中心にいるのは阿修羅王。 

「サチ、なぜだか分からないけど、俺はお前を許せない。」

 その言葉と同時に、貴史は黒き剣でサチを切り捨てた。 

「どうして……己を修羅にしたリノの事を、憎んでたんじゃ……ないのか?」

「分からない、けど、リノはただ人間達を鬼や修羅にしたかっただけじゃなかったと思うんだ。俺はその答えが知りたかった。 そして何故だか分からないが、リノが死んでいる現実に苛立っている。それは俺の知りたい答えが消えたからなのか、人が殺された事への怒りなのか、自分でも分からない。ただ今もまだ腹の中が燃えるように熱く、怒りが治らない。」

「人か?リノは人ではなく修羅だぞ。可笑しな事を言うやつだ……」

 阿修羅王とその軍勢が貴史の目の前まで到着した時には、すでにサチは息絶えていた。

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