第7話 地獄界
暗い……まるで、暗闇が無限に続いているような空間だ。貴史は少し怯えている様子だ。
剣を構え、いつ鬼どもが襲って来てもいいように臨戦態勢をとっている。
降りてきた上部より、蒼い炎がユラユラと近づいてくる。
サチが残してくれた炎のおかげで、周りが見え始めてきたのであった。
サチの事が気にはなっていたが、今は進むしかないと思い、貴史はサチの残した蒼き炎の進むほうへと歩き始めた。
ズバズブズブと奇妙な音と共に、地面から全身真っ黒のいかにもって感じの鬼が5.6.7.8.9.10…… 10匹は現れた。
「お……まえ、たか……し……」
なぜだか分からないが鬼は貴史と呼ぶのである。
「俺はお前らなんか知らない」
貴史は大きな声で叫んだ。
その瞬間、突然、貴史にだけ突風が吹き、10メートルは吹き飛ばされた。
「痛い……いったいなんだったんだ」
しかもまた辺りは真っ暗、どうやら今の突風でサチの蒼き炎が消えてしまったようだ。
貴史は構える。
きっと黒鬼は近くにいるはずなのに、周りは暗闇。貴史は気が変になりそうだ。
ガタガタと震えながらも剣を構え、右へ左へ、後ろへと向きを変える。
その時、ボッという大きな音と共に、目の前に二つの炎が燈った。
よく見るとその二つの炎の間に、大きな人影のようなものが見える。
貴史は恐る恐る、目線を上のほうに向けていくと、その巨大な人影は、黒鬼だった。
「黒鬼王?」
まさに蛇に睨まれたカエル状態。
体がまったく動かなかった。
黒鬼王は貴史をずっと見ている。
「リノが選んだ男か……」
黒鬼王が何を言っているのか意味が分からない。
「貴史よ、ここはな、六道の最下層地獄界。 お主がリノが選んだ男じゃな。」
黒鬼王は訳の分からない事を語り始めたため、貴史は話に割って入った。
「俺は生きたい。ただそれだけだ。だからあなたの血が必要なんです」
「ワシの血を飲んで鬼神と化すか? それで阿修羅の兵になり天界でも攻めるつもりなのか?」
「鬼神?」
「そうじゃ。半修羅がワシの血を飲むと鬼神となる。鬼神とは、この世の中における最強生物。天界の者をも凌駕するであろう。だからこそ、六道の世界を行き来してはならぬのが、我ら鬼や修羅、そして神の掟でもあるのじゃ。だがリノは掟を破り、ここに来て、ワシに相談を持ちかけた。」
「相談?掟ってのを破ってまで、リノってのは、どうしてここへ?」
急に黒鬼王の形相が少し怖く変化した。
「貴史よ、仮面を取れ。そして口を開け。」
貴史はただただ恐ろしく、黒鬼王の言う通り、仮面を外し、口を開いた。
グシュっと音が鳴ったと思ったら黒鬼王がかなりの力で拳を握り、血が流れている。
ボトボトと流れ落ちる黒鬼王の血。
「さぁ飲め」
正直、気持ち悪い。
普通に人間の血でも嫌なのに、鬼の血なんて……
だけどそんな事考えている余裕も時間もない。
貴史は黒鬼王の手から流れ出る血を手で受け、それをゴクゴクと飲んだ。
身体中から黒い蒸気のようなものが吹き出している。
青と黒の紋様が身体中に行き渡っていく。
「これでお主は鬼神となった。これより修羅界に戻れ。そこで、己の目で真実を見極めよ‼︎」
体が軽い。
フワッと宙に浮く。空も食べそうだ。
「真実っていったいどういう事?」
「行けば分かる。それぞれの想い、理想、野望。それを見て、お主がどんな道を選ぶのか、楽しみにしておるよ」
とにかく畜生界に置いてきたサチが心配な貴史は畜生界まで、飛んだ。
「鬼神ってすげー。空も食べるぜ、ってここは空じゃないだろうけど」
貴史は畜生界に再び戻ってきたのであった。
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