第5章〜消えた春色〜

第25話その日の学校

「遠藤。………遠藤?」


遠藤さんが来てないと知ったのは、朝のホームルーム。出席確認の時だった。

いつも静かに、ただそこにいるのが当たり前のように座っているものだから、学校に来て彼女の席を確認はしなかった。


「誰か…あー、清水。知らんかね?」

「いや、わかりません」

「そうか…うーん。困ったな、連絡も来てないし…ちょっと電話してくるな。超近未来的なターザンロープして待っててくれ」

「「「「「「「「は?」」」」」」」」

「じゃ」


ガラガラ、ピシャッ


「「「「「「「「……」」」」」」」」

「おいテメェら!ありったけのアルミホイルと作業用のロープ持ってこい!極太な!」

「誰か電球!ライト持ってきて!出来ればカラフルなのを!」

「おい!どこかフリーの素材で近未来的な音源探して来い!」

「…」


妙に団結力のあるクラスだなぁ…と思いつつも、実際はただ混乱しているだけだ。

この学校の生徒は大半がそうだ。というか、教師も。

何かにぶち当たったり、混乱したり、何だかんだすると、逃げるように何かに打ち込む、もしくは、隠す。

そして、心の用意ができたら話す。

卑怯だとは、思う。けれども…それがここの人たちのやり方なのだ。


それよりも


「(あーあ…連絡先、交換しとけば良かった)」



後悔後悔。

ま、僕にできることでもやろうかな。



___★☀︎★___



「あ、もしもし。いつもお世話になっております、遠藤刹那の担任の者なんですけれども…はい。いつもありがとうございます…はい。実は今日、刹那さんがまだ来ていなくてですね、何か問題でもありましたのでしょうかと電話をかけさせていただきまして…」


刹那の担任である男の教師が電話をする。

冷や汗ダラダラであり、ハンカチで顔を拭いながら話をしている。


理由は単純。相手が日本有数の名家である、早乙女家だからである。


「あ、はい…はい、そうですか。わかりました。刹那さんが登校したら、連絡をしますので、はい、こちらこそお忙しい時間に申し訳ありません。はい、では失礼します」


カチャ


「ふぅぅぅぅぅ〜……」

「おつかれさん」

「ありがとうございます…」


同期の教師が肩をポン、と軽く叩き、労ってくれる。

良い仲間に恵まれたものだ、と思う中。


「遠藤、どこ行ったんでしょうね」

「さぁ…少なくとも、お家を出た時はちゃんと制服も着ていたらしくて…」

「まさか、家出とか?実家に帰ったとか…」


同期の言葉に首を横に振る担任。


「遠藤は小さい頃に母親を亡くしてます。それ以前に、父親とも仲は悪いそうで…」

「そうか…どうしたもんかねぇ」


真剣に話が進むが、彼らの頭の上には




ティラノサウルスの被り物が乗っていた。




___○○○___


ー???ー


「あぁ、捕まえた愛しい子。僕の綺麗な可愛い子。あっはは!もう逃がさない!逃がさない!絶対に!!僕の元でずっと、ずっと、ずうっと暮らすんだ…ふふ、君に似合う服、飾り、部屋!全部用意してあるからね!」



今はまだ薄暗い、カーテンの締め切られた部屋。暗くても、僅かな光を反射するガラス細工たち。

他にも、薄らぼんやりと人形たちも見える。


ここは鳥籠。

真っ直ぐな彼が作った、宝物のためだけの楽園。


中央に置かれた円形のベッド。

天蓋があり、カーテンもあり、まるでどこかのお姫様のベッドのようだ。

それに付いているのは、似合わない、丈夫そうな



鎖。



さぁ、皆さんで言いましょう。




















これ、絶対ヤバいやつじゃん!!!




と。



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