第4章〜事件〜
第19話茶会
蛍祭が無事終わり、一週間と少し。
六月中旬。私立朝倉学園温室。
「こうして茶会をするのは初めてだな。早乙女」
「あぁ、そうだな。成宮」
「お二人さん、もうちょい気楽にしていいんじゃない?」
藤二郎、光太郎、そしてもう1人の男子生徒が紫陽花の咲く温室で、優雅に茶会をしている。
使用人である優弥たちは壁の方で待機をしていたり、お茶や菓子の用意をしている。
「…そうだな」
「…まぁな」
男子生徒の言葉で、2人は肩の力を抜く。
この男子生徒の名は【
藤二郎、光太郎と同じ学年であり、同じクラスである。穏やかな性格であり、フレンドリーなため友人が多い。
今回の茶会は彼が開いたものだ。
「そういえば、成宮くんは使用人連れてないんだね」
「成宮家は使用人は屋敷内、パーティーなどの時だけ連れるということになっている」
「そうなんだ。やっぱり、家それぞれだね」
紅茶を飲み、菓子をつまみながらそう言った飛華流。
すると、何かを思い出したように藤二郎に問いかける。
「そういえば!早乙女くんって、使用人は4人のはずだよね?もう1人は今日はお休み?」
「いや、元から違う学校なんだ」
「そうなんだ〜違う学校だと、大変だね」
ふにゃ〜と笑う飛華流。
長めの黒髪が目にかかる。
「望月の髪は、黒なんだな」
「成宮くんは赤だもんね。目は黒なのに」
「遺伝だ遺伝。そんなこと言ったら早乙女だって紫だろ」
何故か髪と目の色の話になる。
「俺も遺伝さ。……うちのもう1人の使用人も、黒髪じゃなかったな…それを言ったら千紗もそうだが」
「え、何色なの?」
「白に近いピンク…桜色かな」
「へぇ〜!!綺麗そうだね」
目を輝かせ、どんなのかなぁ、と考え始める飛華流。
藤二郎は少し不思議に思い、
「うちの使用人のどこがそんなに気になるんだ?」
と飛華流に聞く。
飛華流は
「いやぁ、僕はただ綺麗なものが好きなだけだよ。」
と苦笑しながら答える。
「綺麗、ね」
頬杖をつき、クッキーをかじる藤二郎。
その後も、使用人や家での食事などの話で、茶会はそれなりに賑やかになった。
___◆◇◆___
「ただ今帰りました」
「あら、おかえりなさい。刹那さん」
「メイド長。お疲れ様です」
裏口…勝手口?である厨房の方から帰ると、メイド長が出迎えてくれました。
今日の夕食などの話をすると、
「刹那さん。刹那さんに、手紙が来てるの」
「手紙…ですか?誰からですか?」
「それが…差出人がわからないのよ。でも、あなたの名前だけ、それも名字まで書いてるものだから気味が悪くてね」
捨てようと思ってたのよ、というと、メイド長は最後まで渡したくないという風に、私に手紙を渡す。
【遠藤刹那様】
白い封筒に、名前だけが綺麗に書かれている。
「どこかに置いてあったんですか?郵便受けとか」
「それが……そうね。言うべきね」
「…」
「この手紙が置いてあったのは…」
___◆◆◆___
「ただいま」
「おかえりなさいませ、藤二郎様」
「おかえりなさいませ、藤二郎様。千紗、都華咲、優弥もおかえりなさい」
「「「ただ今帰りました」」」
正面玄関から藤二郎様たちの声がする。
いつもより2時間ほど帰りが遅いと思ったら…そうでした。今日は同級生の方と茶会があると言ってましたね。
「…刹那は?」
「今部屋で課題をやっていますよ」
少し間がありましたね。あたりを探したんでしょうか。
「そうか。夕飯は少し遅めで頼む」
「わかりました。…千紗たちには仕事があります。着替えたらいらっしゃい」
「「「はい」」」
今日も何事もなく1日がまわる。
私の手元には【遠藤刹那様】と書かれた不気味な手紙が握られていた。
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