第16話せつなとこうたろう

ー刹那ー


「やだぁ!刹那ちゃんったら可愛いぃ!!」

「そ、そうですかね?」


裏方に行くと、手にはブラシや髪飾りを持った小学校時代の友人たちがいて、すぐ椅子に座らされ、色々いじられ、気づけば衣装を着ていました。


女子…怖し…!!


「刹那ちゃんなら絶対似合うって、海ちゃんと話してたの!当たりね!」

「うぅ…本当に変じゃないですか?」

「変じゃないってば!すごく可愛いから、自信持って?」

「…はい!」

「かんわいぃぃぃぃ!!」


頷けば、ギュッと抱きしめられて変な声が出そうになる。

なんとか抑えましたよ…


さて、私の衣装はまず、イメージカラーが薄い桃色。全体的に着物をモチーフにした形ですね。

模様は朝顔。青色も薄い紫色もあります。

最後に、背中側にある、腰の帯止め的な役割を担っているのがふわふわと下向きに揺れている薄い桃色の衣…の様なもの。ちょうちょ結びが二、三回されているのでしょうか?ふわふわしてます。


まぁ、そんな衣装でして。

髪飾りの方はと言いますと…髪型はほぼ下ろしたまんま。両サイドを三つ編みにして、その上に鈴のついたリボン(白色)を付けています。左右同じのを、です。

靴はブーツの様なもので、私は黒色です。


この衣装で二曲三曲踊るんですよねぇ…


「踊れるでしょうか…」

「ん?心配?」

「まぁ…」


私が本音を漏らせば、それを拾ってくれるリーダー格の子。


「もし衣装が重かったりしたらアレンジ次第でどうにでもなるから、そんな心配しないでいいよ〜。さ、海ちゃんも待ってるし、行こっか」

「はい」


まぁ、踊って見ればわかりますよね。



___☂◇☂___



【さぁ夜の街を探し行こう!】


ヒュゥゥッ、ドォォォン!!


曲のラストスパートが終わり、花火の効果音が鳴る。本番では本当に花火を打つらしいから、今のうちにも慣れておかないといけませんね。


「刹那ちゃんすごい!すぐ踊れちゃうだなんて!」

「前に一回、踊ったことがあったので…」

「でもすごいよ!」

「あ、ありがとうございますっ」


少し汗を拭き、水分補給をする。


「せっちゃん!」

「あ、海ちゃん」

「やっぱすごいよ、せっちゃんは」

「海ちゃんこそ、センターで堂々と踊れてすごいよ」


海ちゃんと会話をしていると、数人、ステージの方へやって来る。

見ると、藤二郎様たちと、え?


「刹那。素晴らしい踊りだったよ。あぁ、それと、紹介しよう。俺の友人の」

「…こーくん」

「…刹那…」

「!…知り合いなのか?」


どうして、何で


「どうして、こーくんが…光太郎くんが、藤二郎様たちと知り合いなんですか?」



___☂▽☂___



「幼馴染、だったのか」


藤二郎の言葉に、コクリと小さく頷く刹那。

刹那の幼馴染、成宮光太郎なるみやこうたろうはずっと窓の外を見ている。


「幼稚園から、小学校六年間はずっと同じクラスでした。腐れ縁、ですね」


刹那が苦笑気味にそう言う。


「まぁ、光太郎くんは私のこと、嫌いだと思いますけど」


少し棘のある言い方をして、窓の方にいる光太郎を見る。

光太郎はそれが気まずいのか、頭に手を当て、はぁ、とため息をつく。


「俺は別に、お前のこと嫌いじゃねぇよ。むしろ好きだ」

「嘘。だってずっとブスとか、バカとか言ってたじゃない」

「お前の怒った顔がブスなんだよ。そんな風に考えるところもバーカ」


優しいのか優しくないのかわからない言い方をする光太郎。

刹那がまた口を開き、喧嘩に発展するかと思った時。

ガチャッと扉が開き


「はいはーい。喧嘩はそこまでね!お祭りあるから行こうよ。屋台たくさん出てるよ!あ、せっちゃんは浴衣着ようね!」


海が入ってきた。

ちゃっかり刹那を確保してある。



渋々と言った感じではあるが、光太郎は祭りに賛同し、藤二郎たちはそもそもその祭りに招待されているので行くこととなった。


「まだ前夜祭だけれど、蛍祭の始まりですよ!」


海の明るい元気な声が響く。

刹那はズルズルと連れていかれた。

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