第15話友達ー幼馴染
「「「「「………………」」」」」
沈黙が流れる車内。
少し…いえ、結構気まずいです。
…まぁ、この微妙な空気は一部私のせいでもありますが。
海ちゃんから手紙が届いた日。メイド長から移動手段は早乙女家持ちで、と言う話になった時のこと。
藤二郎様や千紗さんたちも蛍祭に“お客様”として行くことが判明。どうせなら一緒に行きなさい、と言われたのが始まりです。
電車でもいけます!と言ったら
『あら、刹那さんは小さいし可愛らしいから、悪い人に連れてかれちゃうわ』
と言う言葉で全て押し切られました…ははっ、メイド長強し。
まぁ、押し切られまして。六月最初の金曜日。午前5時から車に揺られ【蛍祭】が開催される【蛍町】というところに向かっています。
もちろん、藤二郎様、千紗さん、都華咲さん、優弥さんが一緒です。
そして、雰囲気が気まずいです。
何故って?………私が、避けてるから、だと思います。
「…っ…」
出しかけたため息を飲み込む。
きっと、千紗さんたちは私以上に悩んでしまっているはず…私が、私が勝手に思い込んで、突き放してしまっているから。
「(あぁ、でも、ごめんなさい。まだ、信じられない、信じる覚悟が私にはないんです)」
車内ではずっと、空を見て過ごした。
あ、でも、休憩毎に藤二郎様の席にゴキさんを仕掛けてました。
優弥さんに叱られました。
___♤☁︎♤___
「せっちゃん!」
「海ちゃん!」
午前10時半。早乙女家のお屋敷を出発してから5時間ほど、ようやく【蛍町】に着きました。
出迎えてくれたのは、私の友達であり【蛍祭】の実行委員でもある海ちゃんでした。
「友達なのかい?」
「はい。小学校の頃からの友達です」
「そう」
藤二郎様が聞いてきます。
まぁ、友達の話はあまりしたことがなかったですしね。聞いてくるのは当たり前でしょう。
「早乙女藤二郎様と御付きの方ですね。ご案内いたします。…せっちゃん、お荷物持って裏方おいで。衣装合わせあるから」
「わかった。ありがとう、海ちゃん」
「いいのいいの!では、早乙女様、ついてきてください」
海ちゃんは明るい声と笑顔で藤二郎様たちを先導する。
やっぱり、明るい子は雰囲気も明るくしてくれますね。
「私も、そうなりたいものですね…」
さて、裏方集合でしたよね。
ーーー
ーー
ー
「刹那とは、親しいんですか?」
「!…そうですね、小学校6年間は同じクラスだったので、仲は良い方ですよ」
藤二郎の質問に、海は少し後ろに向き答える。
「でも」
「?」
「私より親しい人はまだ1人、居ますよ」
「まだ…」
「せっちゃんの幼馴染なんですけどね。まぁ、今はちょっと違うかな?」
苦笑気味の海。
藤二郎はそれに対して興味を示さなかったのか、特に質問は無い。
「せっちゃん…刹那ちゃんはどうですか?」
「どう…とは?」
今度は海から質問してくる。
藤二郎はほんのりと笑みを浮かべながら質問の内容を問う。
「うーん…性格とか、有能か無能かどうか、とかですかね」
「そうですね…性格は優しい面もあれば力強い面もありますね。そして、人としても能力的にも有能ですよ。」
「そうですか。気に入っていますか?」
「私付きにしているのが何よりの証拠でしょう」
藤二郎は笑みを深め、そう答える。
海はそうですね、と少し笑う。
「…では。くれぐれも刹那を手放さないよう、よろしくお願い申し上げます」
前を向いたまま、振り返らずにそう言う海。
それだけ言うと、「さぁ、行きましょう!」と先ほどの明るさを纏う。
友達でここまで心配するのだから、幼馴染はどうなるのだろう。
藤二郎たちは心配になりながらも、好奇心を隠せはしなかった。
___♪☆♪___
【
刹那の友達。活発でダンスや運動が得意。黒髪に、青が混じったような少し不思議な髪。蛍町の町長の娘。
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